研究課題
ミトコンドリアを構成する蛋白質の殆どは細胞質において前駆体として合成され、前駆体のミトコンドリアターゲティング配列を認識する細胞質因子によってミトコンドリア表面に運ばれた後に膜を輸送されてそれぞれのコンパートメントに局在化する。本年度の研究では次の事柄を明らかにした。【1】 前駆体の外膜透過の機構を明らかにするために、Tom70.Tom120、Tom22、Tim23の膜外ドメインを大腸菌で発現・精製し、ミトコンドリア前駆体との結合をショ糖密度勾配遠心、免疫沈降法などを用いて解析した。その結果、前駆体に対する親和力は輸送経路の下流に位置する因子ほど高いこと、用いたすべての輸送因子の存在下に前駆体-Tom70複合体を加えると前駆体はTom20とTom22を経由して最終的にTim23に渡されること、逆反応は極めて起りにくいこと、などを示した。これによって、外膜の内外に配置された輸送因子の形成する「化学的な非対象性」が駆動力となって前駆体の外膜透過が起ることを明らかにした。【2】 ミトコンドリア内局在を異にする様々な前駆体とTom70.Tom20.Tom22、Tim23との結合を免疫沈降法により解析した結果、Tom70とTom20は全ての前駆体を、Tom22の膜間スペース領域は膜間スペース以降に輸送される前駆体のみを、そしてTim23はマトリクスにまで輸送される前駆体のみを認識することを示した。これによって、輸送因子がミトコンドリア内局在を異にする前駆体の仕分けに関わっていることが明らかになった。【3】 ラットミトコンドリア外膜の輸送因子として、OM37、TOM70.Metaxin.TOM40のcDNAクローニングと性質の解析を行った。OM37とMetxinは哺乳類ミトコンドリア輸送に特有な因子であった。【4】 ラット肝臓ミトコンドリアの内膜輸送因子Tim17、Tim23、Tim44を同定しミトコンドリア輸送に於ける機能解析を行った。
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