研究課題
数種のサンゴを用いて同種異群体間の接触実験を行い、接触反応と境界部の組織の観察を行った。非癒合反応を示すペアでは、境界面に骨格基質と類似した物質が分泌され、両組織を隔てていた。しかし成長先端部の組織は接しており、接触面の皮層には大きな液胞が見られ、非癒合ペアにおいても、細胞毒性の結果組織が損傷されていることが示唆された。覆いかぶせ反応の序列が、成長速度の差のみによって決まるのではなく、組織非適合反応の結果、一方の組織が損傷を受け成長が遅れるため、相手に覆いかぶされるという可能性が示唆された。サンゴと共生藻の遺伝的多様性の解析のため、約10種のサンゴより、サンゴと共生藻のDNAを別々に抽出した。現在、rRNA遺伝子をPCR増幅し、制限酵素断片長多型を調べる準備をしている。宿主と共生藻の特異性を調べる実験では、イソギンチャクAiptasia palidaを暗黒下で飼育することにより、共生藻をもたないイソギンチャクを作成した。今後このイソギンチャクに様々な系統の共生藻を感染させ、共生藻組成の変化を調べる。サンゴが自らの大きさを認識し、群体サイズによって生殖戦略を変えるという仮説を検証するため、配偶子生産量および成長速度を様々な大きさの群体で調べる実験を開始した。イボコモンサンゴの群体より様々な大きさの破片を作成し、ハワイ大学のココナツ島の実験所前にセットした。ハナヤサイサンゴ類に共生する生物群集のうち、サンゴガニ類の種構成とホストのサンゴ種の関係を調べた。ハワイのハナヤサイサンゴから採集されるサンゴガニ類は大部分がTrapezia intermediaであった。一方ハラジカハナヤサイサンゴには数種のサンゴガニ類が生息しており、ホストのサンゴ種とサンゴガニ類の間に相互認識機構が働いていることが示唆された。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)