研究課題
光化学反応中心を構成するタンパク質成分の光条件下における特異的なリン酸化は、シグナル伝達において重要な役割を果していると考えられている。このタンパク質のリン酸化の生物学的役割を明らかにするため、本研究では、ラン藻のD1タンパク質のリン酸化部位であるThr2を除いた、あるいはAlaに変換した突然変異株について、光合成の光化学反応および環境ストレスに対する応答を解析し、タンパク質のリン酸化の役割を明らかにする。本年度はこのために必要となる部位特異的変異株の作製を中心として研究を遂行した。ラン藻にはD1タンパク質をコードする遺伝子が3種類(psbA1、psbA2、psbA3)存在するため、D1タンパク質の部位特異的変異のためには、まずこれらの一つずつを破壊した変異株を作製しなければならない。ラン藻Synechocystis PCC6803のゲノムDNAからpsbA1を含む約1.8kbpのBamH1-EcoR1断片、psbA2を含む2.3kbpのEcoR1-HindIII断片、psbA3を含む1.5kbpのBamH1-EcoR1断片を調製した。これらのDNA断片を用いて、例えばpsbA1のBanII-BanII領域をテトラサイクリン耐性遺伝子に置換した組み換えDNAを作製した。これらラン藻に導入し、相同組み換えによってpsbA1の破壊されたラン藻を得た。psbA2おpsbA3遺伝子についても同様に破壊した。さらにこの株のpsbA2遺伝子を改変してD1タンパク質のThr2のコドンをAlaのコドンに改変したDNA断片を作製し、現在これを上述のpsbA遺伝子の破壊株に導入し、リン酸化部位の改変された変異株の作製を進めている。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)