研究概要 |
1.ヒトミスマッチ修復遺伝子群のうち遺伝性非ポリ-プ性大腸癌(HNPCC)における変異の約70%を占めるhMLH1およびhMSH2について、酵母での各種発現ベクターを作成した。これらには、異なるプロモーター(ADH1,PGK)、低コピーまたは高コピー複製(CEN,2μ)型,HAtagの有無、異なる選択マーカー(LEU2,TRP1,HIS3)などを組み合わせて約20種類作成した。酵母株はR.Kolodnerより供与された野生型、ミスマッチ修復遺伝子変異株(msh2,mlh1,pms1,msh2/mlh1,msh2/pms1,mlh1/pms1,msh2/mlh1/pms1)を用いた。ヒトnMLH1およびhMSH2をこれらの株に発現し、酵母CAN1遺伝子または酵母hom3遺伝子上の変異率の変化を解析した。その結果、(1)hMLH1を発現した場合には野生型酵母のミスマッチ修復能が著しく阻害されることを突き止めた。(2)hMLH1またはhMSH2単独では酵母ミスマッチ修復遺伝子変異株のミスマッチ修復能を相補できなかった。(1)の表現系はHNPCC家系に報告されているhMLH1の10種類の変異(ミスセンチ変異4種類を含む)のうち9種類を正常hMLH1と識別できた。また、酵母のミスマッチ修復能を簡単にモニターできるリポータープラスミドの開発に成功した。このリポータープラスミドを用いてhMLH1の機能診断系を開発し、変異が未知のHNPCC患者からhMLH1のミスセンス変異を同定した。次年度は、他のヒトミスマッチ修復遺伝子(hMSH3,hMSH6,hPMS2)について発現ベクターを構築中で、ミスマッチ修復遺伝子変異株において複数のヒトミスマッチ修復遺伝子を発現して、相補性について検討する予定である。 2.米国および日本国内でミスマッチ修復機構やHNPCCを含めた遺伝性大腸癌についての調査(資料収集、情報交換、検体収集)を行った。次年度についても引き続き調査研究も平行して行い、ヒトミスマッチ修復遺伝子の機能解明と遺伝子機能診断の開発に役立てる予定である。
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