研究分担者 |
GRAYBIEL Ann マサチューセッツ工科大学, 工学部, 教授
渡辺 雅彦 北海道大学, 医学部, 助教授 (70210945)
嶋 啓節 東北大学, 医学部, 助手 (60124583)
虫明 元 東北大学, 医学部, 助教授 (80219849)
蔵田 潔 弘前大学, 医学部, 教授 (30170070)
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研究概要 |
大脳運動関連領野の機能を解析するために,生理学的手法と分子生物学的手法を統合した研究を進め,成果を得ることができた.特に霊長類を対象とした分子生物学的アプローチを,生理機能との関連において実験研究に導入したことが本研究の特色である.そのために国内・国外の研究者が協力し,緊密な研究連絡のもとに研究を進め,共同研究を行うことによって以下の項目について研究が進展した. 1.大脳基底核と大脳皮質の機能的な連絡すなわち大脳皮質-基底核連関の構造と機能について新しい知見が得られた.線状体の出力は直接系と間接系に分けられる.この2系の機能的意義を知るために,まず大脳運動野を生理学的にマッピングし,次に微小電極によって2時間連続的に微小刺激を加えた.刺激後直ちに脳を灌流固定し,最初期遺伝子であるc-fosならびにjun Bの発現を免疫組織化学の手法で検出した.同時にEnkephalin細胞を免疫組織化学的に検出した.その結果,一次運動野刺激後のjun B発現細胞の多くはEnkephalin含有細胞であることが判明した.この事実は一次運動野から線状体への入力が,いわゆる間接系に多く分布することを示している.次に補足運動野を生理学的にマッピングし,微小刺激後のIEG発現の検討では,IEG陽性細胞とEnkephalin陽性細胞の分布は重複が少ないことが判明した.このことは,補足運動野-線状体系がいわゆる直接系に強く入力することを示しており,これらの知見は大脳運動野-基底核連関の機能構築の理解に関し,極めて重要な知見を提供したと言える. in situハイブリダイゼーション法によって,霊長類の大脳におけるNMDA受容体サブユニット発現解析を行った.生理学的に部位同定をまず行い,次に新鮮脳から凍結切片を作成し35S標識のオリゴヌクレオチドプローブを用いて解析を行った.受容体のうちGluE ε1,ε2,ζの3種のサブユニットはそれぞれ大脳運動野,運動前野前頭前野に於て異なる分布をすることが判明した.特に皮質層構造における分布のちがいが顕著であった.次にNMDA受容体のサブユニット抗体が得られたので,蛋白レベルでの分布も検索中である.
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