研究概要 |
ゴナドトロピン刺激による卵胞の成熟と代謝が亢進し解糖系のkey enzymeであるphosphofructokinaseの活性が上昇することが知られている。しかしながらphosphofructokinaseの最も強力なアロステリックエフェクターであるFru-2,6-P_2を触媒する6-phosphofructo-2-kinase/fructose-2,6-bisphosphatase(EC2.7.1.105/EC3.1.3.46)の卵巣における作用は全く不明である。一方、近年、ゴナドトロピンと共に種々の生理活性物質が卵胞成熟の調節に関与していることが注目されている。なかでもactivinは卵胞顆粒膜細胞にて産生され、局所で卵胞成熟の強力な調節因子として働くことが知られており、更に肝細胞ではactivinは糖代謝にも関与することが報告されている。そこで私達はactivinによる卵胞発育と解糖系酵素の変動を同時にモニターすることの可能な系を確立することを検討した。これまで報告されている卵胞培養は血清添加倍地を用いているため6-phosphofructo-2-kinase/fructose-2,6-bisphosphatase活性の測定には適さない。このため私達は全成分の組成の明らかな無血清培地を用いoocyte-follicular complexを培養する系を確立し、activinやゴナドト ピンの添加により、oocyte-follicular complexの発育やprogesterone,estradiol,inhibinなどのホルモンの産生が亢進することを観察した。現在この系を用いて6-phosphofructo-2kinase/fructose-2,6-bisphosphataseの活性の変動を検討中である。ところが卵巣型酵素のクローニングに本年度は成功しなかったものの、卵巣型酵素と相同性の高いことの予測される精巣型6-phosphofructo-2-kinase/fructose-2,6-bisphosphataseを遺伝子工学の手法を用いて大量発現しX線結晶解析に成功し代謝機構の詳細を検討することを可能とした。
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