研究課題
下垂体前葉は生体の成長、代謝、免疫、生殖に関わるホルモンを分泌する。これらのホルモンは各々異なった細胞から合成・分泌される。そしてこれらのホルモンの合成・分泌は視床下部因子によって制御されていることが明らかになっている。しかし、下垂体前葉のホルモン産生細胞は生体の種々の生理的変化に伴って、細胞の機能が亢進したり盛んに細胞増殖を行う。これらの前葉細胞のダイナミックな変化は視床下部因子のみでは説明できない。このことに関し、最近、下垂体前葉にはホルモン産生細胞の以外の細胞でホルモン産生細胞を長い突起を伸ばして包み込む細胞、濾胞星状細胞が注目されてきた。この細胞からは線維芽細胞増殖因子や血管内皮細胞増殖因子等が分泌される他、インターロイキン-6が分泌されることが明らかになった。そしてこれらの成長因子によるパラクリン機構で周囲のホルモン産生細胞の機能を制御することが考えられてきた。我々は、この濾胞星状細胞に注目して研究を行った結果、これまで知られていた成長因子に加えインターロイキン-8およびマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)が産生されていることが新たに明らかになった。またこれらの産生と視床下部因子として最近注目されてきたPACAPとの関係が明らかにされた。特にM-CSFに関しては下垂体前葉のホルモン分泌細胞と免疫との関連を探る上で注目している。下垂体のM-CSFは免疫系を非特異的に亢進するリポポリサッカライド(LPS)の刺激によって増加する。さらにLPSの刺激によってプロラクチンの分泌が促進することが明らかになった。これらの結果は下垂体におけるM-CSFの生物学的な意義と免疫との関連を考える上で重要な発見であると思われる。
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