研究課題
膵β細胞ATP感受性K^+チャネル(K_<ATP>チャネル)はグルコースによるインスリン分泌を調節する重要な分子である。最近、我々は膵β細胞のK_<ATP>チャネルは血糖降下剤であるスルホニール尿素の受容体(SUR1)と内向き整流性KチャネルサブユニットBIR(Kir6.2)の複合体であることを証明した。さらにヒトSUR1遺伝子とKir6.2遺伝子は第11染色体短腕11.5に隣接して存在することを示した。本年度ではKir6.2遺伝子とSUR1遺伝子の変異について検討を加えた。正常者70例とインスリン非依存性型糖尿病(NIDDM)200例でKir6.2遺伝子変異の検索を行った。Kir6.2には2種類の遺伝子多型性が認められたが、それらの多型性の頻度は正常者と日本人糖尿病の間で差が認められなかった。また、2種類のKir6.2とSUR1と再構築されたATP感受性Kチャネルの機能にも全く差が認められないことより、日本人に認められた2種類のKir6.2遺伝子がNIDDMの発症に寄与する可能性は少ないものと考えられる。一方、家族性低血糖症の1例においてSUR1遺伝子異常が認められた。SUR1を遺伝子工学の手法で、患者に認められた異常SUR1に類似したSUR1を人工的に作成し、Kir6.2と共発現させて、チャネルの機能を解析したところ、ATP感受性K^+チャネルでの特性が全く認められなかった。従って、SUR1遺伝子異常によりTRP感受性K^+チャネル機能異常を引き起こし、持続的なインスリン分泌をきたすことにより、低血糖症を招来することが示された。現在、Kir6.2遺伝子の変異を作成し、これをマウスに導入して機能解析を行っている。さらにKir6.2遺伝子破壊マウスも作成中である。引き続きインスリン分泌に関与し、膵β細胞で発現する特異的遺伝子を検索し、より詳細な膵β細胞分子マップを作成する予定である。
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