研究分担者 |
福田 光則 東京大学, 医科学研究所, 学振特別研究員
道川 貴章 東京大学, 医科学研究所, 助手 (90282516)
井上 貴文 東京大学, 医科学研究所, 助手 (10262081)
古市 貞一 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (50219094)
LINAS Rodolf ニューヨーク大学, 医学部, 教授
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研究概要 |
シナプトタグミンは、神経細胞やある種の内分泌細胞の小胞上に存在し、神経伝達物質放出の際のカルシウム・センサーと考えられており、このタンパク質の機能解析はシナプス伝達の機構解明に大きな貢献をすると考える。特に細胞質側に存在するC2A,C2Bと呼ばれる領域はプロテインキナーゼCのC2調節領域と相同性が高くシナプトタグミン分子の機能ドメインと考えられている。我々はC2Aドメインはカルシウム依存的にリン脂質を結合するのに対し、C2Bドメインはカルシウム非存在下でもリン脂質及びイノシトールポリリン酸(Ins 1,3,4,5-P4,Ins 1,3,4,5,6-p5,Ins 1,2,3,4,5,6-p6)を特異的に結合し二つのC2ドメインの性質がかなり異なることを明らかにし、そこで神経伝達物質放出における二つのC2ドメインの役割の違いを検討するため、各ドメインに対するポリクローナル抗体を作成しイカの巨大軸索の神経終末へのマイクロインジェクションを試みた。C2Aドメインに対する抗体をイカの巨大軸索に導入すると、プレシナプスの活動電位には影響を与えずに神経伝達物質放出を抑制した。一方、C2Bドメインに対する抗体を用いた場合には、プレ及びポストの活動電位になんら変化は見られなかったが、高頻度刺激を加えることによりシナプス小胞のリサイクリングがシナプトタグミン分子のC2Bドメインを介して行われていることが示唆された。次にシナプトタグミン2のC2Bドメインのイノシトールポリリン酸結合領域に様々な変異を導入し正電荷アミノ酸クラスター(321GKRLKKKKTTVKKK334)の中でも327、328、332番目のリジンが結合に重要であることを明らかにした。これらのアミノ酸は9種のアイソフォームで良く保存されているにも関わらず検討した4つのアイソフォーム(シナプトタグミン1-4)のうちシナプトタグミン3のC2Bドメインはイノシトールポリリン酸結合能を示さなかった。以上の結果は、シナプトタグミンのアイソフォーム間での機能の多様性を示唆する物と考えられる。
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