研究課題
国際学術研究
先端的光学技術を導入することによりシナプス形成に関する研究は推進し、幼若ラットから分離培養した神経細胞の成長円錐は伝達物質放出能、機械及び電場感受性を備えていることを明らかにした。急性分離した海馬神経細胞をグルタメートのセンサーとして用いることによって、DRG細胞の成長円錐からカルシウム依存性にグルタメートが放出されることを発見した。この放出はω-agatoxinによって消失し、ω-conotoxinによってかなり抑制された。DRG細胞にω-agatoxinを作用させた後、一次抗体として抗-ω-agatoxin抗体を作用させ、次いで、金コロイド(30nm)や蛍光物質を付けた二次抗体(抗-抗体)で処理してω-agatoxin感受性のCaチャネルを免疫学的に標識した。電子顕微鏡を用いて金コロイド標識したω-agatoxin感受性Caチャネルが成長円錐に存在することを明らかにした。直流電場内に置いた培養DRG細胞の成長円錐について細胞骨格(アクチン)、細胞内信号系(チロシン残基リン酸化蛋白)及び細胞核の動態を解析した。このために、3種類の蛍光プローブを用いてそれぞれを可視化して、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。電場を与えると、アクチン細胞骨格とチロシン残基リン酸化蛋白ともに分布が非対称になり、細胞核の位置の偏位が起こることが分かった。培養DRG細胞の細胞体よりホールセルバッチクランプ膜電流測定(膜電位を-60mVに保持した状態で記録)を行いながら、微細ガラス管先端により機械的刺激を細胞の各所に与えた。そして、機械的刺激を成長円錐とラメリポディアに加えた時だけ刺激に対応した内向き電流が記録された。成長円錐刺激に対応して記録される電流の逆転電位などについて電気生理学的特性を解析した結果、内向き電流はクロライドチャネルの活性化によるものと推測された。蛍光色素DiIで染色した培養海馬細胞を光近接場に置いて、DiIから発生した蛍光を冷却CCDカメラで検出・観察した。DiI染色が細胞全体で均一であることを通常の落射蛍光顕微鏡で確認した後に、全反射型の近接場光学顕微鏡で観察した。カバーガラス上に培養したにもかかわらず、DiI蛍光は細胞体の中心部および神経突起の先端部に限られ、これらの部位では、ガラス面と細胞膜が200nm以下に接近していることが分かった。また成長円錐から伸び出しているフィロポディアの先端に相当する部位でもDiI蛍光が検出されたので、フィロポディア先端はガラス面に近接或いは接触していると考えられる。
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