研究概要 |
本年の研究においては,マウスオステオポンチン遺伝子のノックアウト動物の作成が行われた.マウスオステオポンチンについて,その主要なエクソンを含むDNA領域を対象としてホモロガスリコンビナイネーションを行った.このホモロガスリコンビネーションによってプラスマイナス選択培地から得られたES細胞をマウスの胚に導入し,この胚から得られたマウスを更に交配することにより,オステオポンチン遺伝子の発現しない動物の作成を試みた.現在その理由が明らかではないが,十分な生殖細胞への遺伝子のトランスミッションが得られず,恐らくこれはES細胞の種類や性質に依存するものと考えられ,様々のES細胞の導入を試みた.この結果一部は生殖細胞に至り,オステオポンチン遺伝子の遺伝子のヌルミューテーションに至るものが得られつつある.これによって本研究においては,オステオポンチンが神経組織,骨芽細胞,腎臓組織に加え,皮膚や乳腺などの上皮細胞にも出現していることから,これらのトランスジェニックマウスを用いた研究を行うことにより,多彩なオステオポンチンの機能について検討することが可能となるモデルがほぼ確立された.オステオポンチンは破骨細胞においても発現しており,α_vβ_3のインテグリンを介して破骨細胞のカルシウムシグナルを調節し,またオステオポンチンの存在によって破骨細胞の接着或いは破骨細胞におけるNOの機能の調節が最終的には骨吸収の調節として見られることが明らかとなっている.従ってオステオポンチン遺伝子の不活性化によって作成された生体内の状況が従来培養細胞において見られていたこれらのオステオポンチンの遺伝子の機能と相関するか否か,また動物における加齢や成長に際してこれらのオステオポンチンの機能がどのように骨の基質のバランスの決定,或いは細胞の増殖・分化に関連するかを検討する為の重要なモデルが得られた.
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