研究概要 |
1. LSIRF遺伝子欠損マウスを作製し,リンパ球の分化と機能におよぼすLSIRFの役割を解析した結果、LSIRF遺伝子欠損によって機能的には重篤な免疫不全をきたしていることが明らかになった.LSIRF遺伝子欠損マウスは免疫グロブリン産生がほとんどなく、またT-dependent, T-independent antigenに対する免疫応答も極めて弱い.-方、T cellではallogenic response, CTL responseが観察されずallogenic tumor rejectionも全くおこっていない。 2. LSIRFの過剰発現とヒトT細胞腫瘍化の関係を検討するためにT細胞株での発現をみたが、HTLV-I感染細胞株のみに発現がみられた.またtrans-activatorであるTaxによるLSIRFの発現をinducible Taxが導入されたJurkat細胞、JPX-9(東京医科歯科大学、中村正孝教授より分与)にて検討した結果、LSIRFはTaxにて誘導がかかるが、その効果は極めて弱くTaxによる直接誘導なのかをpromoterの解析から更に検討する必要が示唆された. 3. ATL患者検体を用いてLSIRFの発現を検討したが現在までのところ慢性期の患者での発現の昂進はみられていない.しかし急性期患者由来リンパ球では発現が増強していることが見い出された. 4. IRF-1遺伝子欠損マウスの解析からNK細胞の機能発現にはIRF-1が必須であることが証明された。一方、多発性硬化症のモデルともいわれるアレルギー性実験性脳脊髄炎の系ではIRF-1が増悪因子として働くことも示されヒトレトロウイルスによる中枢神経系の疾患とIRFファミリー分子との関連の検討も必要と考えられた。
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