研究概要 |
(1)ラット胎児を培養液の中で42℃10分間の熱ショック処理を行い,1時間後に抽出したRNAと無処理の胎児試料より得たRNAから,逆転写によりcDNAを得た.これをランダムプライマーを用いて増幅し比較することによって,ストレスに応答して発現する遺伝子を検索した.塩基配列の決定できたものから,ホモロジー・サーチによってこれらが既知の遺伝子であるか検索したが,登録されているものにホモロジーのあるものはなかった.そこで2種の未知の蛋白について塩基配列からアミノ酸配列を決め,ペプチドを合成した.今後,ウサギに免役して抗体を作製し,免疫組織化学的方法とin situハイブリダイゼーション法により,胎児の熱ショックおよび極低線量X線照射後の発現パターンを検討する. (2)妊娠8日マウス胎児に50ミリグレイのX線を照射したところ,熱ショック蛋白質HSP27,HSP47,HSP71とも4時間後に検出され,8時間後には劇的に増加した.またc-Fos,Ras蛋白,Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)も同様に4時間後から検出され,8時間後には劇的に増加した.X線によって細胞分裂がG2期で停止し,4時間後には回復して放射線抵抗性のS期に入りかかったと考えられる.この時の妊娠母体に0.5または1グレイのX線を照射して,胎児の外表奇形を0.5および0.55グレイ,または1および1.05グレイ単一照射群と比較したが,成立頻度に統計的有意差はなく外表奇形誘発についてX線抵抗性は観察されなかった.しかし骨格異常が多数観察されたので,現在多数の胎児について骨格標本の作製と観察を急いでいる.
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