研究概要 |
レニン結合蛋白質(Renin-binding Protein,RnBP)は,腎傍系球体細胞で主として生成されるレニンと結合し、その活性を阻害することから、レニン・アンジオテンシン系(RAS)で説明される血圧・体液調節機構の新しい因子である可能性が示唆されている。 申請者らは、種々の組織でのRnBPの遺伝子発現を主として核酸レベルで検討し、RnBPの組織特異的発現調節を検討するとともにRASにおけるRnBPの存在の普遍性を検討した。さらに、初代培養細胞及び樹立細胞株を用いてレニンとRnBPが共発現されている細胞を検索し、両因子遺伝子の発現調節を解析した。 その結果、RnBPの遺伝子発現は腎臓・副腎・脳・卵巣及び大動脈等の組織において認められた。腎臓における組織学的検索においても、血管系細胞における発現が認められた。ブタ大動脈由来培養血管内皮細胞株は、10%FCS添加D-MEMでconfluent monolayerを形成し、蛍光標識Dil-Ac-LDLの取り込みが認められた。Northern-blot法によりRnBP遺伝子の発現が、またRT-PCR法によりレニン遺伝子の発現が認められた両因子遺伝子の共発現が明らかとなった。そこでアンジオテンシンII(AII)(1μM),TNF-α(50ng/ml),TGF-β(10ng/ml)添加後培養1〜3日のRnBP遺伝子の発現を解析した。その結果AIIでは1日後から著しい発現誘導が認められ、それは3日間持続した。TGF-βでも同様の傾向が認められたが、TNF-αでは形態の著しい変化に拘わらず、RnBP遺伝子の発現に顕著な変化は認められなかった。 また副腎におけるR-A系の諸因子に関する生化学的・分子生物学的研究に関しては、電顕を用いた免疫組織学的手法により、副腎皮質細胞ミトコンドリア内に抗レニン抗体と反応する顆粒の存在を証明した。これらの結果から副腎におけるR-A系の機能として、ステロイド合成への関与の可能性が示唆された。
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