研究課題
国際学術研究
本研究によって主に以下のようなことが明らかとなった。1.中枢神経系で発現するサイトカインの生理的意義の解明(i)IL‐6が海馬CA1領域のLTP現象を抑制した。(ii)VMHニューロン活動に対してTNFαは抑制的に、TNFβは促進性に作用した。(iv)脳内にIFNαが常時存在し、拘束ストレスにより増加した。(v)拘束あるいは高温及び低温ストレスにより、FOS蛋白が、視床下部室傍核、視索前野、腹内側核、第3脳室前腹側壁などに発現した。(vi)拘束ストレス開始30分後より視床下部、下垂体、肝臓でIL-1βmRNA発現が増加したが、海馬、脾臓では変化しなかった。(vii)c‐fosのアンチセンスオリゴ-DNAを視索前野に注入したラットでは、高温及び低温下のいずれにおいても体温を低下させる傾向が見られた。(viii)脳虚血後の神経細胞死をPACAPの脳内及び末梢投与が予防し、このメカニズムにIL-6の脳内発現が重要であることが分かった。以上から、非炎症及び炎症性ストレス時に脳内でサイトカインが発現し中枢神経活動を修飾していることが明らかとなった。2.非炎症性ストレス時に末梢でサイトカインが発現する機序の解明(i)単純拘束等の軽度の非炎症性ストレス時に一般静脈及び肝門脈中のIL-6が増加した。(ii)肝門脈中のエンドトキシン(LPS)濃度が拘束ストレス時に基礎値の3倍に増加し、循環血漿中のLPSの中和により拘束時の末梢IL-6の増加反応が消失した。(iii)腸管内に投与したFITC‐LPSが、単純拘束ストレス時に肝臓のクッパー細胞及び類洞内皮細胞で取り込まれ、FITC陽性細胞の約80%は抗IL-6抗体で染色さた。以上から、非炎症性ストレス時の末梢IL-6の産生・遊離に腸内紬菌由来のLPSが重要なを果たしていることを見出し、生体のストレス応答としての脳・腸・肝・免疫連関の存在を提起した。
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