研究分担者 |
WALSH Michae カルガリー大学, 医学部, 教授
GILES Wayne カルガリー大学, 医学部, 教授
大矢 進 名古屋市立大学, 薬学部, 助手 (70275147)
村木 克彦 名古屋市立大学, 薬学部, 講師 (20254310)
今泉 祐治 名古屋市立大学, 薬学部, 教授 (60117794)
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研究概要 |
心筋・平滑筋においてAタイプK電流を担うKチャネルは異なる遺伝子産物であるという可能性が、単離細胞を用いた電気生理・薬理学的実験結果から得られた。そこでRT-PCR法を用いてこの可能性を検討し、かつ平滑筋のAタイプKチャネルをクローニングした。AタイプKチャネルをコードする遺伝子として脳や心筋でKv1.4,4.2,4.3が挙げられている。これらのmRNA発現レベルをラット平滑筋組織で検討し、心筋・脳と比較したところ、平滑筋ではKv4.3が主要なものであった。さらに平滑筋のKv4.3はこれまで脳で報告されていたKv4.3(Kv4.3M)の遺伝子多形の一つで、C端末付近に新規の連続したアミノ酸配列19個を含むことが明らかとなった(Kv4.3L)(FEBS Letter,1997)。ラット心筋では従来報告されていたKv4.3Mよりも4.3LがmRNAのレベルで多かったが、脳ではKv4.3Lが少なかった。また、Kv.1.4,4.2,4.3M,4.3LをHEK293細胞に発現させ、その電気生理学的性質を比較検討した。Kv4.3Mと4.3Lは活性化・不活性化の電位依存性や不活性化からの回復時間およびアラキドン酸感受性に関して有意な差が無かった。19アミノ酸が付加されている生理的意義についてはまだ不明である。一方、大コンダクタンスCa^<2+>依存性K^+チャネルと電位依存性L型CaチャネルのmRNA発現を各種平滑筋で比較検討し、興奮性の差異の説明が一部可能であることを見出した。すなわち興奮性の低い大動脈と高い精管の平滑筋細胞において、細胞全体のBKチャネルおよびCaチャネル電流密度は明らかに精管において数倍高い。一方、mRNAの発現はCaチャネルでは精管で数倍高いものの、BKチャネルでは同等であった。摘出パッチ法を用いた単一チャネル記録を行うと、確かにBKチャネルの密度は大動脈と精管で同等であった。大動脈においてCaチャネル電流が増大しても流入するCa量の増大によりBKチャネル活性かそれ以上に増大されるので興奮性は増大しない。以上よりCaチャネルの発現が少ない平滑筋においてもBKチャネルは高発現しており、低興奮性(膜電位の安定性)に大きく寄与していると思われる。
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