研究課題/領域番号 |
08044314
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
西野 仁雄 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (60073730)
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研究分担者 |
BORLONGAN C 南フロリダ大学, 医学部, 研究員
SANBERG Pau 南フロリダ大学, 医学部, 教授
犬伏 俊郎 滋賀医科大学, 分子神経生物センター, 教授 (20213142)
藤本 一朗 生理学研究所, 神経情報部門, 助手 (70264710)
福田 敦夫 名古屋大学, 医学部, 助教授 (50254272)
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キーワード | 細胞死 / 虚血 / ミトコンドリア毒 / カルパイン / アストログリア / ドーパミン / グルタミン酸 / 外側線条体動脈 |
研究概要 |
線条件ニューロンの脆弱性の機序を、中大脳動脈虚血におけるニューロン死とミトコンドリア呼吸鎖toxin (3-NPA)投与ハンチントン病モデルラットにおける細胞死の両面から解析し、以下のことが明らかにした。 虚血細胞死のメカニズム (1)中大脳動脈虚血・再開通実験において、細胞骨格(微小管、ニューロフィラメント)障害が最初期変化(0〜30分以内)として現れることを明らかにした。カルパインの活性化とMAP-2発現の低下のためチュブリン鎖のbindingとbundlingが障害され、樹状突起/軸索がcorkscrew状に蛇行し、ニューロン死に至った。一方、これらの変化はMAP-2遺伝子の導入で抵抗性を増すことをCOS7細胞を用い明らかにした。 (2)プロエンザイムとしてのカルパインは中枢および末梢ニューロンでは細胞質よりも核により多量に存在することを、新しく作製した抗体(N末アセチル化ペプチド)を用いて明らかにした。虚血時にはこの核内のプロエンザイムが速やかに活性化されるため核内基質の障害が起こることが明らかになった。 2.ミトコンドリアtoxin (3-NPA)の全身投与による線条体特異細胞死のメカニズム ATP産生不全によるexcitotoxicity閾値の低下及びフリーラジカルの産生が線条体ニューロン死をおこすと考えられてきた。しかしexcitotoxicityの閾値低下だけではなぜ線条体が特異的に傷害されるかを説明できない。我々は30-NPAintoxicationラットの急性期の病態及びin vitro実験の結果より線条体細胞の特異脆弱には以下のメカニズムが深く関与することを明らかにした。 (1)ニューロン死に先行するアストログリア細胞死 ATP産生不全の結果、ATPase活性とcoupleするNa-Kポンプが働かなくなり、膜の脱分極と細胞内Na^+濃度([Na^+]_i)の上昇がおこる。この脱分極及び[Na^+]_iの上昇はニューロンでは僅かであるがアストログリアでは著しいため、アストログリアでNa-Ca exchangerの逆転がおこり、細胞内Ca濃度([Ca^<++>]_i)が天井値に達し、ニューロンに先行してアストログリア細胞死がおこる。 (2)外側線条体動脈の脆弱性 血管の分岐が急角度(ときには逆方向に向かう)のため、本血管の分岐部では乱流が生じ常にstressfulな状態にある。従って虚血、エネルギー不足、intoxication時には分岐部周辺の内皮細胞が真っ先に障害され、アストログリア細胞障害が加わり、BBBが破錠(IgGや補体成分の血管外漏出)する。 (3)ドーパミンtoxicity 3-NP intoxicationラットの線条体ではドーパミン遊離とドーパミン代謝が高進することをin vivo microdialysis法で明らかにした。過剰のドーパミン遊離はoxidative stressの原因にもなる。またドーパミンはアストログリアで[Ca^<++>]_iの上昇をおこすことをin vitroの系で明らかにした。 以上、線条体細胞の脆弱性は虚血ニューロン死及びミトコンドリア呼吸鎖障害時の細胞死の両面から解析した。最初期障害は、前者ではニューロンの細胞骨格障害と核内カルパインの活性化、後者ではアストログリア/内皮細胞の障害であることを明らかになった。しかし両モデルにおいて数時間後にはBBBの破綻が加わり細胞死が加速される。
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