研究概要 |
平成8年度の研究計画にもとづいて,腸管上皮細胞間γδT細胞(γδ-IEL)の胸腺外発達分化局所を腸管粘膜内に検索した結果今までに報告のない新しい腸管リンパ組織を見出しcryptopatch (CP)と命名した.CPは未分化リンパ球に集積であり,以下のような特性を備えていることからγδ-IELの発達分化の場である可能性が大である. 1)CPはマウス小腸から大腸の粘膜陰窩に散在性に分布し(約1,500ヶ所),一つのCPには約1,000個のc-kit^+, IL-7R^+, Thy1^+,LFA-1^+リンパ球が存在する. 2)このCPリンパ球中には成熟リンパ球マーカーであるCD3,αβ-TCR,γδ-TCR, B220及びμ鎖を発現する集団は極めて少なく,高々全体の0〜2%であることが判明した.すなわちCPは未分化リンパ球あるいはリンパ球幹細胞が集積するリンパ組織であると考えられる. 3)CP中には胸腺髄質やリンパ節のT細胞領域に分布するCD11c/CD18陽性の樹状細胞が存在し,これはストローマ細胞として機能すると考えられる. 4)CPは胸腺が著しく萎縮し胸腺外で発達分化するT細胞が優勢となる超高令マウスや胸腺を欠損するヌードマウスにも十分存在することより,T細胞の胸腺外発達分化部位であることが示唆された. 以上よりCPが腸管粘膜に発見された今までに報告のないリンパ組織であり,そこはIEL特にγδ-IELが発達分化する解剖学的局所である可能性がある.これらの新知見をまとめて発表した(J. Exp. Med. 184 : 1149-1159, 1996)が,CPに分布するリンパ球を単離精製して性状を追求中である.
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