重症マラリア、特に脳性マラリアの発症機構の解明

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08044323
• 研究機関: 東海大学
• 研究代表者: 相川 正道 東海大学, 総合医学研究所, 教授 (90271593)
• 研究分担者: PONGPONRATN イー マヒドン大学, 医学部・病理, 教授 ; LOOARESUWAN エス マヒドン大学, 医学部・熱帯医学, 教授 ; CHEONGSUPHA ティー マヒドル大学, 医学部・熱帯医学, 教授 ; NUSSENZWEIG アール ニューヨーク大学, 医・分子寄生虫, 教授 ; 翠川 裕 鈴鹿医療科学技術大学, 助教授 (10209819) ; 松本 芳嗣 東京大学, 農・応用免疫, 助教授 (00173922) ; 堤 寛 東海大学, 医・病理, 助教授 (80138643) ; 永武 毅 長崎大学, 熱研・内科, 教授 (30164445) ; 本庄 祐 京都大学, 医・医化学, 教授 (80090504) ; 鈴木 守 群馬大学, 医・寄生虫, 教授 (60056033) ; 金田 良雅 東海大学, 医・寄生虫, 教授 (60051471)
• キーワード: 脳性マラリア / 皮下組織 / 胃粘膜 / 毛細血管

研究概要

タイ国マヒドン大学熱帯医学部と共同で脳性マラリアの患者95人を臨床学的、寄生虫学的、病理学的に検索し、脳性マラリアの予後を予測するための要因につき検討した。(1)脳性マラリアの病理所見は、脳の毛細血管腔が感染赤血球により閉塞されている事が重要な所見である。この様な毛細血管腔の閉塞がまた他の臓器の毛細血管でも起こっているかを、皮下組織を使用し観察した。
皮下組織の毛細血管腔は、重症な脳性マラリアの患者ほど血管閉塞度が顕著にみられた。マラリアに感染されたサルの病理解剖を行ったところ、感染赤血球による脳毛細血管腔閉塞度は皮下組織毛細血管腔閉塞度と一致している事が判明した。これらの観察から、皮下組織の病理学的観察が脳性マラリアの予後を予測するために役立つことが判明した。(2)脳性マラリアの患者と軽度マラリア患者の胃粘膜内のPh測定を行い、この両者に差があるかを検討した。前者の場合、胃粘膜内Phが低下している場合(Ph <7。0)死亡率が高く、特に入院してから6時間を経過してもPhが低い場合、100%の患者が死亡した。この観察より患者の胃粘膜内のPhの測定は脳性マラリアの予後の予測に役立つ事が判明した。今後とも脳性マラリアの病因について研究を続ける。

研究成果

• [文献書誌] Aikawa,M.et al.: "Membrane knobs of unfixed P.falciparum-infected erythrocytes : new findings as revealed by atomic force microscopy and surface potential spectroscopy" Exptl. Parasitol.42. 626-636 (1996)
• [文献書誌] Aikawa,M.et al.: "Seroprevelance and specificity of human responses to P.falciparum 110 kDa rhoptry proteins using a C-terminal recombinant protein" Infection and Immunity. (in press). (1996)
• [文献書誌] Aikawa,M.et al.: "The molecular basis of pathogenesis of cerebral malaria" Microbial Pathogenesis. 20. 63-72 (1996)
• [文献書誌] Aikawa,M.et al.: "A novel P.falciparum sporozoite and liver stage antigens" J.Immunol. 156. 2874-84 (1996)
• [文献書誌] 相川正道: "マラリア" 臨床医. 22. 33-35 (1996)
• [文献書誌] 相川正道: "マラリア" 化学療法の領域. 12. 4-7 (1996)