研究課題
国際学術研究
1.脳性マラリアの重症度および予後予測因子を明らかにする目的でタイ国マヒドン大学熱帯病病院で95人の脳性マラリア患者を病理学的に検査し以下の結果を得た。(1)脳性マラリアの病理的特徴は脳毛細血管が感染赤血球により閉塞することであるが、重症な患者ほど皮下組織の毛細血管も閉塞していた。さらに、脳性マラリアの霊長類モデルで脳と皮下組織の毛細血管の閉塞度を調べた結果、両組織の毛細血管の閉塞度がパラレルであった。したがって、皮下組織の毛細管閉塞度を調べることにより患者の重症度(すなわち脳毛細血管の閉塞度)が推定出来うると考えられる。(2)胃粘膜内pHが低い(pH<7.3)場合、死亡率が高く、特に入院後6時間経過後も低い場合は、100%の死亡率であった。したがって、胃粘膜内のpH測定が予後予測に有効で有ることが判明した。2.平成9年6月15、16日、東京霞ヶ関ビルにおいて国内外のマラリア専門家約50名を集め、最新のマラリア研究成果の発表と情報交換を行った(マラリアワークショップ)。特に、今日のマラリア再燃の状況を鑑み、国際チームによる下記の様なトライアル継続の必要性を認識した。3.Quinghaosuは脳性マラリアの特異的治療薬であるが、治療中に症状が再燃する場合がある。この欠点を改善するため、我々はタイ国および米国と共同してquinghaosu誘導体であるar tesunateと鉄キレート剤defer ox amine との組み合わせのトライアルを行った。バンコックのマヒドン熱帯病病院において、101人の重症マラリア患者の症状を二重盲検法で検討した結果、両薬剤同時投与による拮抗効果は認められず、またマラリアに起因する肝機能傷害の回復にはartesunate単独投与よりも効果がみられた。したがって、この組み合わせの臨床応用への可能性が高まった。
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