研究課題
冠循環は、力学的には、拍動する心筋内を走行するために血管壁に最も力学的ストレスを受けるシステムであり、代謝的には、高い酸素需要がある心筋組織エナ-ジェティクスにリンクした各種血流調節機能によって代謝性調節をうけるシステムである。本研究ではそれぞれ独自に開発したユニークな生物医工学的・分子生物学的研究の方法論を持つ、国内外の各研究分担者のグループが学際的に協力して、冠血管に作用する力学的ストレス・代謝的刺激が伝達・処理されて血流が調節される機構についてミクロからマクロに至るまでの階層的システムレベルで解析を進めた。実験用動物(イヌ、ウサギ、ラット)を対象にして、我々が開発した20MHz80ch超音波ドップラー法、ニードル型生体顕微鏡、さらにNOセンサーなどを用いて、心筋内微小冠血管血流、血圧、血管径の同時計測を行なった。アムステルダム大から新たに導入した血管内圧制御装置を応用して、微小循環評価のための動物実験法の開発・導入を進めた結果、冠循環の血行動態を変化させると、心筋内で最も虚血に陥りやすい心内膜側の細動脈において速い時間応答で血管径、血流が変化することが明らかになった。また、血管内皮に対する主たる力学的刺激である剪断応力に対する血管内皮由来一酸化窒素の時間的応答を評価した結果、剪断応力に対する血管内皮由来一酸化窒素の時間的応答は従来の知見よりも速く、心筋血流と心筋エナ-ジェティクスの調節に短いlead-timeで寄与しうることが示された。本研究から、心筋内微小冠血管の血流、血圧、血管径計測システムの時間的・空間的高分解能化に伴い、これらのパラメータが従来の知見よりもさらに微小な組織レベルで冠血行動態に鋭敏に反応して速い時間応答で分子レベルで調節されることが次第に明らかになり、計測システムをさらに高分解能化させることの必要性も示された。
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