研究課題/領域番号 |
08044331
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究分野 |
生理学一般
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
桑原 厚和 静岡県立大学, 大学院, 助教授 (60142890)
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研究分担者 |
杉谷 博士 日本大学, 松戸歯学部, 助教授 (20050114)
望月 徹 静岡県立大学, 薬学部, 助教授 (00117780)
藤宮 峯子 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (10199359)
RECHKEMMER G. ドイツ国立栄養生理学研究所, 部長
LABURTHE M. フランス国立衛生院, 部長
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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キーワード | Guinea-pig / Distal colon / Chloride secretion / Cytosolic free calcium / Tachykinin / Crypt cell / Conforcal micorscopy / Ion transport |
研究概要 |
平成8年度は、細胞内情報伝達系としてカルシウムイオンを利用すると考えられるSubstance Pによるクロライドイオン分泌の細胞内情報伝達機構を、モルモット下部大腸を用いた組織レベルでの実験と、さらに下部大腸より単離したCrypt cellを使用して、Ussing chamber及び共焦点レーザー顕微鏡により解析した。その結果、Substance P、Neurokinin AおよびNeurokinin Bの適用により、Crypt cellsの[Ca^<2+>]_iは用量依存性に増加し、その[Ca^<2+>]_iの上昇は一過性であった。またその反応性は、Substance P>Neurokinin A>>Neurokinin Bの順であった。選択的NK-1受容体拮抗薬、FK888の前処置により、Substance PおよびNeurokinin Aによる[Ca^<2+>]_iの上昇は有意に抑制された。また、細胞外のCa^<2+>を除去した場合、Substance Pによる[Ca^<2+>]_i上昇の頂値は変化しなかったが、変化の積分により算出した総[Ca^<2+>]_i変化量は減少した。またThapsigarginの前処理によっても、Substance Pによる[Ca^<2+>]_iの頂値および総[Ca^<2+>]_i変化量は有意に抑制されたが、完全には抑制しなかった。Thapsigargin処理と細胞外からCa^<2+>を除去処理した場合、Substance Pによる[Ca^<2+>]_iの頂値および総[Ca^<2+>]_i変化量は著しく抑制された。これらの実験結果から、Substance Pによる[Ca^<2+>]_iの上昇は、初期に細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からCa^<2+>が遊離し、続いて細胞外からCa^<2+>が流入することが考えられた。さらにUssing Chamberを用いた実験で、基底膜側(漿膜側)のCa^<2+>除去により、Substance Pによるクロライドイオン分泌は完全に抑制された。しかしながら、頂端膜側(粘膜側)Ca^<2+>除去はSubstance Pによるクロライドイオン分泌に影響を与えなかった。従って、細胞外からのCa^<2+>流入は、主として基底膜側から流入していると考えられた。 以上の結果から、粘膜上皮Crypt cellsにおけるSubstance Pによるクロライドイオン分泌機序には、小胞体からのCa^<2+>の放出と同時に、細胞外からのCa^<2+>流入の関与が示唆され、特に、基底膜側(漿膜側)からのCa^<2+>の流入が重要な役割を有していることが示唆された。 平成8年度の実験結果から、漿膜側からのCa^<2+>の流入が粘膜上皮でのクロライドイオン分泌に必要不可欠であることが明らかとなった。そこで、平成9年度は、漿膜側のCa^<2+>の重要性について、さらに検討を加えた。まず、細胞外からのCa^<2+>流入にどのようなcalcium channelが関与しているかを明らかにするため、各種calcium channel阻害剤を用いて検討した。calcium channel阻害剤には電位依存性のL型とT型の阻害剤を使用し、L型アチャネル阻害剤にはnifedipineとverapamil、T型のチャネルの阻害剤にはoctanolとflunarizineを用いた。その結果、L型、T型チャネル阻害剤の前処置によってもSubstancePによる細胞内Ca2+濃度の上昇には変化が観察されなかった。今後はさらにL型、T型以外の電位依存性のカルシウムチャネル及び電位非依存性カルシウムチャネルについての検討が必要である。
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