研究課題
平成8年度は日韓の子ども文化の比較調査の基礎的資料として、両国の子どもの価値観などを明らかにするとともに、それらがどのような媒体によって、作り出されているかなどを考察するためのアンケートを作成し、予備調査を実施した。また、「かつての子ども」すなわち保護者の世代も対象とし、世代間比較も行った。具体的な調査項目は、尊敬する人、希望する職業、好きな歌、好きな昔話、家および学校でよくする遊び、好きなテレビ番組等と、家族、学校あるいはマスコミの子ども文化への影響力を知るため、それらを知った媒体は何かについても尋ねた。親、教師には、子に望む職業、伝えたい昔話、歌などについても尋ね、親や教師が抱く子どもへの期待感と子どもの価値観、嗜好との相違点や共通性を探ることも考慮した。平成8年7月の第1回目の協議においては、質問項目の検討をおこない、11月に両国で実施(調査対象:小学生148名、保護者214名、教師32名)、12月の協議では統計的集計結果の発表、2月には、集計結果の解釈の部分に関して、結果のベスト10の具体的な内容(例えば、尊敬する人として上げられた両国の歴史的人物に関する解説、歌詞、テレビ番組の録画など)を持ち寄り、相互に発表、討議した。予備調査の結果、全体的に祖父母との同居が全くない釜山の子どもに対して、比較的同居世代が多い島根の子どもでも、祖父母による影響は韓国の方が強く、その他相対的に韓国の方が家族の教育力が強い傾向がうかがえる。また、尊敬する人、職業観に対しても興味深い相違点がみられた。来年度は、予備調査で得られた知見をもとに、修正したアンケートで本調査を年度始め早々に行い、結果の意味的分析を進める予定である。また、両国における小学生の位置づけをより明確にするため、本調査では中学3年生も対象にしてアンケートを行う。