研究課題/領域番号 |
08045008
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
竹谷 和之 神戸市外国語大学, 外国語学部, 助教授 (80163400)
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研究分担者 |
アンドレス オルティス. ホセ, オルテガ・イ・ガセット研究財団, 教授 客員研究員
武内 旬子 神戸市外国大学, 外国語学部, 助教授 (70236420)
東谷 穎人 神戸市外国大学, 外国語学部, 教授 (70073343)
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キーワード | バスク民族 / エスニック・スポーツ / バスク神話 / 近代化 / アンデンティティー / 守護聖人祭 / キリスト教 |
研究概要 |
平成8年度は都市におけるバスク・スポーツ研究であり、ビスカヤ県ビルバオ市の守護聖人祭やその周辺の都市、およびアラバ県ビトリア市などにおいて調査・研究を実施した。とくにビルバオ市の守護聖人祭は、バスク神話に基づく母なる大地の具現マリ(Mari)がネルビオン川を昇臨し、9日間の祭が開始する。熱心なカトリック教徒でもあるバスク人がバスク神話に自らのアイデンティティーを求める姿勢には、少数民族が辿らねばならなかった歴史的課題が未だに解決していないことを伺わせる。 この祭は都市の機能を十分に利用し、各地区の特性を考慮に入れてイベントが配置されている。もちろん中心はバスク・スポーツである。いわゆる近代スポーツは登場しない。旧市街と新市街とを結ぶ境界領域でエスニック・スポーツが行われ、種目は丸太切り(aizkolaris)、石かつぎ(arriasoketa)、石引き(idi dema)、綱引き(soka-tira)、レガッタ(estropadak)-、などである。都市では村のように一堂が会する場所の獲得が困難のため、道路を一時的に遮断して実施される。この道路が市民の憩いの場所であり、かつては球戯も行われていた。エスニック・スポーツとトポスの関係は都市においても変化することなく伝承されていることを証明している。 日常労働から派生したスポーツがバスク・スポーツの特徴であるが、原初形態が残存している労働は極端に減少しており、競技者はスペシャリストとして登場する。また過去を追体験できる観客が少なくなり、見世物としての位置が固められていく。一方、バスク発祥といわれるボールゲームペロタ(pelota)はフロントンというコートが都市部でも特別に用意されている。近代的な用具を使用せず素手で硬球を打つことに最高の価値があるとするバスク人の心性に「民族」の意志が表現されている。
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