研究課題
本年度は昨年度の成果を踏まえながら、次のような分野での研究を進めた。1 水産インフラントラクチャーの地方分散の実態とその社会経済効果漁港施設や市場流通施設の建設が全国的に進み、漁業生産の商業化に大きな契機を与えるとともに、全国的な水産物市場流通のネットワークが形成されている実態を明らかにした。中部ジャワのプカロガン、ダガ-ルを中心に調査を実施したが、施設の小規模化が進んでおり、運営主体をめぐって大きな転換期にあることがわかった。2 ジャワ水産物流通の実態と市場における人間諸関係国内流通を対象とする水産物流通が輸出市場と切り離されて成立している様相を明らかにし、産地市場にみられる人間諸関係を経済的な視点から検討した。従属的で排他的な性格があるが、他面ではきわめて競争的であることもわかった。国内外需要の拡大によって、市場流通をめぐる人間関係はダイナミックに変わってゆく。3 日系水産物輸出企業の輸出対応と地域漁業アジア規模で生じている国際分業化の進展のなかで、日系水産物輸出企業は、インドネシア投資を位置づけていた。これらの企業は現地の地域漁業の展開に大きな影響を与えている。ジャワ島チラチャップでは、カンターパートとなる現地企業を通して、沿岸零細漁民の使用する漁具・漁法に変化が生まれ、輸出品の対象となる魚種の市場流通が様変わりし始めていた。地域漁業の輸出志向型への展開が見られた。4 沿岸域資源管理をめぐる新たな動き中部ジャワの一部ではエビ養殖業の粗放化への回帰と、マングローブ林との共生を目指した動きを調査した。(シルボカルチャー)。生産性は高くないが、新たな沿岸域の管理方法として注目される。スマトラ島バンダ・アチェでは、近年注目されているパングリマ・ラウトと呼ばれる伝統的漁業管理方式について引き続き調査した。漁村内の階層部分や漁業種類の多様化が進むにしたがって形骸化しつつあることが明らかとなった。
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