研究課題/領域番号 |
08045015
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研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
嶋田 力夫 長野大学, 産業社会学部, 教授 (60097459)
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研究分担者 |
焦 必方 復旦大学, 日本研究センター, 助教授
陳 建安 復旦大学, 日本研究センター, 教授
京谷 栄ニ 長野大学, 産業社会学部, 教授 (90195397)
安井 幸次 長野大学, 産業社会学部, 教授 (10133472)
表 秀孝 長野大学, 産業社会学部, 教授 (90097452)
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キーワード | 日本 / 中国 / 内発的発展 / 中小企業 / 郷鎮企業 / 比較研究 |
研究概要 |
中国では、1978年の改革・開放以後、計画・集権的な社会主義システムから市場経済システムへ急速に移行しつつある。その過程は、伝統経済から市場経済への移行と計画経済から市場経済への移行という「二重の移行過程」(加藤弘之)として、具体的には農村から都市への市場経済の浸透過程、および、沿海地域から内陸地域への波及過程として進行している。この過程、とりわけ農村工業化を担った経済主体が郷鎮企業であった。上海市近郊という地域の限定はあるものの、我々が調査した郷鎮企業の発展を、地域社会へのインパクトという視点で整理すれば、次のような特徴が摘出し得る。第1に、農村の過剰労働力の吸収である。中国での戸籍制度とそれに基づく「離土不離郷」の政策の下では、農村の過剰労働力を吸収する受け皿は、郷鎮企業の発展を以外にはなかったのである。第2に農民の所得の向上への寄与である。農民の郷鎮企業への就業は、その所得を向上させるとともに、農村に消費市場を形成し、また貯蓄が郷鎮企業の拡大生産の投資資金として活用されるというような地域経済の循環を生み出している。第3に、農業への投資資金の提供である。郷鎮企業の発展している地域の農業生産性は相対的に高く、それは郷鎮企業の利益の一部が、郷鎮政府によって農業基盤整備や農業機械の購入に充当されていることと関連している。第4に、地域の社会福祉や教育事業への補助である。これも、郷鎮企業の利益の一部が、福祉・教育を含む地域の社会資本整備に投資されている。以上のように、郷鎮企業の発展は、農村の工業化と都市化を促進しているが、その中で我々が特に注目したのは、中国国内の低工業化地域からの住民の流入と定住であり、地域内に新たな階層構造が形成されていることである。これは、「コミュニティの再構築」という課題として提起されているように思われる。
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