研究概要 |
これまでの予備調査で,中国には,意思決定過程に重要な役割が担って参画している秘書が存在することが分かってきた。それは,日本型の雑務除去秘書でもなく,欧米型の事務代行型でもない,いわば「第三の秘書」ともいえるものである。こうした意思決定参画型秘書の実態を明確にするために調査研究を行った。 中国秘書は,政府各級機関,国内資本企業及び外国資本企業で働いている。そこで,本調査研究は,改革開放が最も進んでいる上海市を調査対象エリアとし,特に秘書のニーズが高い外国資本企業で働く秘書に焦点を合わせて実施した。 調査に当たっては,秘書機能を抽出するため,機能分析・組織分析・関係分析を意識して調査項目を策定した。具体的に調査項目は,次の10章,186問をもって構成した。(1)秘書業務の内容(11問),(2)政治に対する関心(30問),(3)秘書業務の水準(29問),(4)趣味・関心(16問),(5)心身素養(18問),(6)職業を選択する動機(23問),(7)消費意識(14問),(8)結婚に対する意識(31問),(9)価値観(10問),(10)個人及び企業の基礎資料(4問)。 調査結果の分析に当たっては,個別性の捨像と普遍性の抽像という求心的な方法を採った。 本調査研究により,秘書機能が抽出された。そして,これまでしばしば不可解とされてきた中国の意思決定過程に,秘書が深く関わっていることを明らかにした。具体的には,秘書が,上司のために,上司の本務である意思決定の判断材料になる情報を,収集・作成・加工・蓄積・検索・提供するという形で参画するものであった。 なお,今後の研究課題は,研究費の関係で出来なかった政府各級機関に働く行政秘書の実態調査を実施し,本研究成果との比較研究することである。
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