研究課題
国際学術研究
本研究は、宇宙線のエネルギースペクトルにおける“knee"と呼ばれる折れ曲がりの原因を解明することを目的として、平成7年より年次的に行っている。気球による観測は、平成7年に2回、平成8年に2回、平成9年に3回、カムチャッカ半島からボルガ河流域まで160時間程の飛翔時間で行われ、平成9年の1回を除いて8回観測に成功した。回収された観測器の解体、宇宙線を検出した原子核乾板とX線フィルムの現像、毎年の観測計画およびデータ解析方針・解析方法の打ち合わせ、そしてデータ解析とその結果のつきあわせは、日ロ双方の研究者が相互に訪問することによって行われた。この相互訪問による議論や共同の解析作業は、研究の進展にとって大いに効力を発揮した。また、日ロ双方で顕微鏡、精密ステージおよびコンピュータを組み合わせた新しい自動測定装置を開発し、原子核乾板上で宇宙線の衝突点を顕微鏡で探す作業の大幅な省力化を実現させた。これにより、長時間観測による統計量の大幅なアップにも解析が充分対応できるようになった。データの解析については、平成7年度の分についてはすでに終了し、粒子別のエネルギースペクトルを良い精度で得ることが出来た。統計量としては充分ではないが、結果は低エネルギー側からの延長と矛盾しないものであった。また電荷決定法・エネルギー決定法など、解析面での新しい方法の開発も行い、これらをまとめて1997年、南アフリカのダ-バンで行われた宇宙線国際会議で報告した。平成8年と9年のデータについては、上記の新しく開発した測定システムを使って現在日ロ双方で解析中であり、平成8年の分については、今年の夏にまでに結果を出す予定である。
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