研究概要 |
有用な機能性高分子新素材を開発するためには,それが必要とされる幅広いニーズを的確に把握することが不可欠である.この様な観点から,日中両国における機能性高分子材料の開発動向に関する文献調査が行われ,概容がまとめられた. 機能性高分子の合成及びその特性に関する研究に関しては,特に両大学間における議論を通して,両親媒性高分子および,粒子状高分子の合成と応用に対する研究協力が大きな成果を生む可能性を持つことを見出し,合成実験を両国で進めた.日本側では,シ-ド重合法による親水性-疎水性IPN粒子を合成し,血漿タンパク質の吸着挙動を検討した.中国側では,スチレンとジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩の共重合に関する研究を行った. また環境応答性グラフト高分子については,N-イソプロピルアクリルアミド/アクリル酸共重合体グラフト鎖中のアクリル酸成分に過酸化基を生成させたグラフトセルロースを合成した.このグラフトセルロースは水中において膨潤度が温度応答するために,グラフト鎖の膨潤・収縮状態に応じて過酸化基の重合開始活性を制御することが可能になった.また,N-イソプロピルアクリルアミド/アクリル酸共重合体等のグラフト鎖を有するグラフトポリエチレン類の合成などの成果が得られた. 中国側が担当した構造の制御されたポリオレフィンの合成・物性研究に関しては,チ-グラー・ナッタ触媒によって合成されたエチレン/プロピレン/オクテン共重合体の構造が,NMR測定に基づいて詳細に検討された.また日本側においても,立体規則性ポリオレフィンの劣化挙動を解析した結果,シンジオタクチックポリプロピレンが耐熱性,耐候性に優れることを明らかにした.
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