研究課題
今年度は、阪神震災のデータを調査整理すると共に、唐山地震について現地調査を行った。これらの調査資料を踏まえて、阪神と唐山両地震の震災と復興の比較研究によって、震災評価の新しい指標の提案に至った。比較研究では神戸市と唐山市の市勢ならびに被害概要を纏めた。両地震とも都市直下型の大規模な地震であり、発生時間もともに深夜から明け方にかけての時間帯で、就寝中に被害が大きい。両市の市勢の違いを見ると神戸市の面積が唐山市の1/2、人口が1.4倍、人口密度が2.8倍であり、唐山市の中心である唐山市区では人口密度が1.1万人/km^2で、神戸市の最も人口密度が高い長田区と同数である。神戸市の1人あたりGDPは420.3万円、唐山市の1人あたりのGNPは31.6万円であるが、唐山市は人口の構成比が全国の0.11%なのに対しGNPの構成比が0.8%と高く、中国経済の重要な都市といえる。これらの社会・経済背景の下で、唐山市の全壊世帯が神戸市の2倍だったのに対し、唐山市の死者数は神戸市の32倍にも達した。唐山市の1世帯人数が神戸市の1.7倍としても、唐山市の人的被害がかなり大きかったと言える。また、都市全体の復興のカギを握っている住宅復興について、緊急避難、応急仮説、本格復興の3段階として捉え両地震の復興プロセスを比較した。その相違が明らかであったが、これらも両市の社会・都市構造の違いによるものと分かった。以上の結果を吟味する上、神戸及唐山地震の被害のうち人的被害(人口)・直接(ストック)被害額・間接(フロー)被害額を抽出し、地震にかかる指標(等価損失年数)を用い、統合的に比較した。この指標を使うことで両地震の被害の「時代の差」という影響をとりのぞき、定量的な分析を試みた。これにより社会・都市構造の違いによる人的被害・直接被害額・間接被害額の傾向を考察できた。
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