研究課題
国際学術研究
本研究では、まず高温測定用の高分解能の空間電荷分布測定装置を開発した。電力ケーブルの絶縁材料であるポリエチレンに直流高電圧を印加すると空間電荷と呼ばれる電荷が蓄積し、電界を変歪し、絶縁破壊を引き起こす原因となる。従って、長距離送電用直流電力ケーブルを開発する場合には、絶縁材料に蓄積する空間電荷分布を測定する必要がある。著者らはこれまでパルス静電応力(PEA)法と呼ばれる技術を用いて空間電荷分布測定装置を開発してきた。しかし、実際のケーブル用絶縁材料は高温で用いられるため、空間電荷分布を評価するには、高温での測定が必要となる。そこで、従来の高分子圧電センサに変わる新しいセンサ(結晶性センサ)を用いることによって、高温用測定装置を開発した。さらに、熱刺激電流と空間電荷分布の経時変化を同時測定することにより、絶縁材料中の電荷の移動を解析した。一般に、熱刺激電流測定などの電流測定では、外部回路電流を測定しているため実際に試料中を移動する電荷の挙動は分からない。しかし外部回路電流が、伝導電流と変位電流の和で与えられることに着目した。変位電流は電荷分布の経時変化より求めることができるので、外部回路電流測定と電荷分布の経時変化を同時測定することにより伝導電流を算出することができる。また、ケーブル形状試料を簡易に測定できる空間電荷分布測定装置を開発した。従来のケーブル状試料用測定装置では電極外径に合わせた扇形の電極を用いていたが、様々な径のケーブルを測定する場合には、電極を交換する必要があった。そこで、平板電極を用いた装置を開発し、電極を交換することなしに簡便に空間電荷分布を測定できるようにした。この装置を用いると、狭い範囲の電荷分布が測定でき、3次元分布測定の可能性も示した。
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