研究課題
1.土壌調査1996年8月9日、吉林省〓南市大通郷の2ヵ所において、アルカリ塩類土の土壌調査を行った。調査地点の地形はほぼ平坦で、日当たりは良好である。調査地点は、天然の植生が認められる場所と植生がまばらで土壌が露出した場所である。中国の土壌分類によれば、植生のある場所の土壌は草甸〓土、植生のない場所は草甸塩土である。聞き取り調査によれば、10年前は本調査地域は立派な草原であったが、家畜の過放牧のために土壌の荒廃が進んだとのことである。土壌断面は深さ1mのピットを試坑し、2土壌断面の形態的特徴を記載した。さらに、各土壌層位より不攪乱土壌試料を容重缶に採取した。調査地点のアルカリ塩類土は、2土壌断面とも堅く締まっており、土壌硬度は塩類土よりもアルカリ土において高かった。また、アルカリ土では表層から下層までいずれの土壌層位においても高い土壌硬度を示したが、塩類土では表層土の方が下層土よりも土壌硬度が高かった。仮比重は植物根や腐食を含むアルカリ土の表層土を除いて全体的に高く、1.6〜1.7の値を示した。真比重もアルカリ土の表層以外は高い値を示した。三相分布によれば、2断面とも56〜64%の高い固相率で特徴づけられ、下層になるほど気相の割合が低くなる傾向が認められる。両断面とも土性はシルト質埴土、軽埴土、重埴土で粘土含量が高かった。全層位において塩酸によって激しく発砲することから、両断面とも炭酸塩を多量に含んでいることが推定された。現地の土層断面調査地点より採取した-25cm〜-30cm、-60cm〜-65cm、-100cm〜-105cmの三深度の試料について、日本の土工における土質材料としての分類を行い、次の結果を得た。(1)いずれの深度の試料においても2mm以上のレキは1%以下であった。(2)3試料は粘質土ないし粘土と分類され、機械施工の最も困難な土質と判定された。(3)脱気水を用いた飽和透水係数の測定を試みたが、試料の飽和の時点で塩分の溶解が原因と思われるスレ-キングが生じ、試料は下部から崩壊した。透水係数の測定法が今後の課題である。2.水田の用水調査上記の土壌調査地帯には、水源はなく約30km東南東に下った水田開拓地とそこから下流に当たる北へ約26kmに位置する水田地帯で、地下水をポンプ場水している井戸水を採取し、水質と水温を測定した。その結果、上流側の水田開拓地の水温は7.5℃、井戸の深さ40mと地下水位は深く、pH7.1、EC(電気伝導度)0.38mS/mであり、下流側の水田地帯では水温8.0℃、井戸の深さ8mと地下水位が浅く、pH7.6、EC1.00mS/mであった。地下水の水質は、pH、ECともに水田用水としてはほとんど問題がないが、水温は非常に低く、水稲生育限界の13℃以上にするためには水温上昇用の温水池等の施設を必要とすると考えられる。なお、両地点ともに井戸水の水量はかなりあると判断された。また、水田開拓地の水稲は、穂ばらみ期に入っているのに出穂しておらず収穫量は厳しいと予測された。3.畑作物調査アルカリ塩類土壌地帯の視察調査から、丘陵地や地上水に恵まれ水はけの良い土地では、塩類土に比較的に強い作物、トウモロコシ、ヒマワリ、及びモロコシ、アワ、ヒエ等の雑穀類が栽培されていた。今回の現地調査は短期間であったので、畑作物の生育状況まで判断できなかった。平成9年度からは試験畑を設けて、長期的に塩類土の緩和策と畑作物の生育状況の関係を調査する。4.草地の植生調査1996年8月9日に吉林省〓南市大通郷の土壌調査地点の周辺で、植物の生育が比較的に旺盛な場所(調査地点1)と貧弱な場所(調査地点2)の2ヵ所において植生調査を行った。調査地点1には11草種が生育しており、全体の生草重量は133.4g/m^2であった。常時家畜によって採食されている場所であるこを考慮しても植物量は低い。調査地点2は過度の放牧によりアルカリ性の強い土壌が一部表面に露出している場所で、生草重量は107.7g/m^2で調査地点1と大差なたったが、草種数は4と少なかった。全体重量の約9割はアルカリ土壌に強い喊蓬であるが、虎尾草、星星草も残っていた。調査地点1のような多様な植物種が生育することが望ましいが、このような状態に回復させるためには、まず地面を植生で覆い蒸散量を抑制する必要があり、かなりの放牧禁止期間が必要と考えられる。
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