研究課題
日本における研究経過:マレーシア科学大学の共同研究者2名を招聘した。大学では、研究討議を行うとともに、訪間者の専門に関するセミナーを開催し、海浜湿地帯の生物生産について共通理解を深めた。野外調査として、長崎県諫早湾の泥干潟及び佐賀県の砂干潟を回り、干潟の様相と生物相を調べ、群集生態学的解析手法についての討議を行なった。また、アイソザイム分析によりマレーシアの海浜湿地で採集した魚類の分類学的検討を行い、海浜湿地帯における生物生産性の評価についてマレーシア側専門家から教示を受けた。またつぎつぎに破壊されている河口域と干潟の自然の状況についても、その実態を調べた。マレーシアにおける研究経過:日本側のメンバー4名(延べ5名)がマレーシアを訪問した。 マレーシアでは、マレーシア科学大学で関係研究者が集まって研究討議を行うとともに、ぺナン島及びクアラルンプール郊外の湿地を共同で調査した。その結果、マレーシア各地の湿地帯でマングローブ林の伐採、埋立など、環境破壊が急速に進行していることと、干潟魚類の呼吸と営巣に従来全く知られていなかった特異な行動があることが分かった。すなわち、この海域の干潟に生息するトビハゼ・ムツゴロウ類のうちの複数種類に、個体が生息孔に空気を運び込んで貯蔵し、あるいは古い空気を入れ換える行動が観察された。その行動が熱帯の干潟の強度な還元状態の中で多くの魚類の生息を可能にしていると考えられた。さらに、トビハゼ・ムツゴロウ類の営巣行動の記録を行い、魚類の染色体と酵素活性に関する研究資料の収集も行った。