研究課題
日本における研究経過:マレーシア科学大学の共同研究者3名を招聘した。大学では、熱帯と温帯の湿地帯生物に関する比較研究を行うとともに、訪問者が専門とする分野のセミナーを開催し、海浜湿地帯の生物生産について共通理解を深めた。野外調査として、長崎県野母半島の海浜、諌早湾の干拓地及び佐賀県の干潟を回り、干潟の様相と生物相を調べ、微生物群集、動物行動解析、藻類群落等の調査手法について討議を行なった。また、マレーシアから持参した動物プランクトンの分類学的検討を行い、熱帯湿地帯における生物生産性の評価についてマレーシア側専門家から教示を受けた。また両国で次々に破壊されている海浜湿地帯の自然についても、その実態を調べ、討議した。マレーシアにおける研究経過:日本側の研究代表者・分担者3名と協力者(大学院生)2名(延べ11名)がマレーシアを訪問した。マレーシアでは、マレーシア科学大学で関係研究者が集まって研究討議を行うとともに、ペナン島、クアラルンプール郊外の湿地を共同で調査し、サラワク大学の協力を得てサラワク州クチンの湿地帯を調査し、採集動物の形態、生理、行動などを共同で調べた。その結果、サラワク州まで含めたマレーシアの干潟魚類相が明らかとなった。その成果の一部を学会誌に発表するべく準備中である。さらに、1998年1月にマレーシア産トビハゼ類の1種の特異な行動に関する研究の結果が国際誌Natureに掲載され、内外の注目を浴びた。また、2種類の魚類の湿地帯環境に適応した行動がほぼ明らかとなり、現在、我が国とマレーシアの双方で公表の準備中である。以上の干潟魚類に関する研究成果のほかに、マレーシア産藻類相の研究もまとまりつつあり、頭足類の分類と生態に関する研究にも今回初めて着手した。
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