制癌剤のターゲティング療法:とくに肝転移癌の制圧をめざして

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08045067
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 前田 浩 熊本大学, 医学部, 教授 (90004613)
• 研究分担者: SEYMOUR Len バーミンガム大学, CRC癌研究センター, 講師 ; KERR David J バーミンガム大学, 医学部/CRC癌研究センター, 教授 ; OLLIFF Simon バーミンガム大学, クィーンエリザベス病院, 講師 ; 今野 俊光 熊本大学, 医学部・附属病院, 講師 (60117348)
• キーワード: スマンクス / リピオドール / 固型癌 / 動注療法 / X線-CT / 画像診断 / 肝癌 / リピオドール / 遺伝子治療

研究概要

1.バ-ミンガム大学クィーンエリザベス病院において、スマンクス/リピオドールによるヒト肝癌治療法の第一相試験を行った。
2.その成績は日本での結果を再現することができた。即ち、投与量(GradeI→IV)と抗腫瘍効果は比例し、GradeIIIおよびIVの投与が必要であることがわかった。
3.12例中低血圧性ショックなどを呈したcase2があったが、いずれもコルチコステロイドと抗ヒスタミン剤投与が改善できた。
4.遺伝子治療に関して、in vitroのculture cellの系では予定の成果が得られたが、ウサギVX-IIを用いた系では抗腫瘍効果は全く得られなかった。すなわち、より詳しくはIL-2およびTNF-βDNA結合遺伝子をリピオドールに可溶化したものをリポフォスチンのリポゾーム/ミセル(サスペンジョン)等を腫瘍の栄養動脈より動注した。腫瘍組織へのターゲティングは完璧であったが、レポーター遺伝子のβ-ガラクトシダーゼの発現はみられなかった。今後の課題として、より陽性荷電の強いポリマー、及び、より脂溶性を付与したポリマーをヴィヒクルとする必要等の方策を検討した。
5.臨床第一相の結果は、論文として投稿するところにきた。6月のオランダでの米国NCI-EROTCの合同会議で、Dr.Olliffが発表する。

研究成果

• [文献書誌] Tsutomu Oda: "Targeted vinblastine chemotherapy with two preparations of lipiodol contrast medium" Anticancer Research. 17. 3521-3530 (1997)
• [文献書誌] Jun Wu: "Modulation of enhanced vascular permeability in tumor by a bradykinin antagonist,a cyclooxygenase inhibitor,and an NO scavenger" Cancer Research. 58. 159-165 (1998)
• [文献書誌] 前田 浩: "肝癌に対する高分子化抗癌剤動注療法における癌組織集積性-とくにスマンクス/リピオドール療法を中心に" 医学のあゆみ. 184. 385-391 (1998)
• [文献書誌] 前田 浩: "SMANCS研究の最近のあゆみ" 癌と化学療法. 25Supplement I. 1-9 (1998)
• [文献書誌] 今野 俊光: "SMANCS/Lipiodolの肝癌に対する臨床成績" 癌と化学療法. 25Supplement I. 10-18 (1998)
• [文献書誌] Yoichiro Noguchi: "Early phase tumor accumulation of macromolecules:A great difference between the tumor vs normal tissue in their clearance rate" Japanese Joumal of Cancer Research. 89(in press). (1998)
• [文献書誌] Darshini Kuruppu: "SMANCS-LIPIODOL complex arrests the growth to liver metastases from colorectal cancer in a murine model" Cancer. (in press). (1998)
• [文献書誌] 前田 浩: "メディカル用語ライブラリーシリーズ「癌」" (株)羊土社, 3 (1996)
• [文献書誌] Hiroshi Maeda: "Medical Chemistry:Todey and Tomorrow" Blackwell Science Ltd., 8 (1997)
• [文献書誌] Hiroshi Maeda: "Functional Polymers,Syntheses and Applications" American Chemical Society, 15 (1997)
• [文献書誌] 今野 俊光: "21世紀をクリエイトする発想の原点を探る" 大分医科大学医学部公衆・衛生医学(II)講座, 12 (1997)
• [文献書誌] Koichi Doi: "The Biology of Nitric Oxide Part 6" Portland Press(London)(in press), (1998)