研究課題
1) NO吸入によって、NOはその多くは血管内でヘモグロビンと結合し、ニトロシルヘモグロビン(HbNO)を生成しヘモグロビンの酸素運搬能に影響を与える可能性が考えられる。しかし、羊にNOを吸入させ、ニトロシルヘモグロビンの電子スピン共鳴シグナルを検討したところ、60ppmのNO吸入では、血中Hb-NO濃度の増加は、酸素飽和度60%以上で全ヘモグロビンの0.11%(11オmol/L)とごくわずかであり、酸素運搬能には影響しないと考えられた。MetHB濃度も全ヘモグロビンの2.4%(240オmol/L)以下であった。NO吸入中のHbNOのESRのシグナルは非対称的で、hypoxiaでの混合静脈血で明らかな超微細構造(3本線)を認め、NOの結合のためにヘム鉄が5配位結合になっていた。このことは、アロステリック効果により、低酸素状態で酸素を組織に放出しやすくする可能性がある。2)メサコリン吸入による低酸素血症は、NO吸入によりさらに増悪していたが、NO濃度5ppm以上でSaO_2の低下はすでにプラトー値に達しており吸入NO濃度を増加させてもSaO_2は変わらなかった。気管支喘息患者へのNO吸入は低酸素血症に注意する必要がある。3)100%酸素暴露時のiNOSノックアウトマウスでは組織障害が対照の野生型マウスより強く、肺水腫および好中球潤もつよく、iNOS由来のNOにより肺損傷は軽減される可能性がある。4)諸家の報告と同じく、我々のARDS臨床例でも、NO吸入により生存期間は延長したが、予後に有意差は見られなかった。しかし、肺挫傷例や再還流症候群では予後を改善させる可能性がある。
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