研究概要 |
α_2-アゴニストの静脈内鎮静法への使用を目的とし代表的α_2-アゴニストである塩酸クロニジンを静脈内投与し,侵害刺激を加え,薬の循環動態への影響,血漿カテコールアミン,およびコルチゾール濃度への影響と鎮静作用,鎮痛作用について検討を加えた。さらに,自覚的副作用についても調べた. 対象は健康成人ボランティアとし,クロニジン2μg/kgを静脈内投与した.侵害刺激としては電気刺激を正中神経に間欠的に加えた.循環動態への影響を検討するため心拍出量,収縮期および拡張期血圧,心拍数を薬物投与前をコントロールとして10分間隔で90分間測定した.また血漿ノルアドレナリン.アドレナリン・コルチゾール濃度を刺激前および刺激下に,クロニジン投与直後.15,30,60,および90分後に測定し,同時に鎮静度と鎮痛効果をVisual analogue scale(VAS)によって評価した. その結果,心拍数はクロニジン投与直後,20,30,50および60分後にコントロールに対して有意差のある低下を示したが,いずれも10%以内の低下であった.拡張期血圧はクロニジン投与後20〜90分まで有意差のある低下を示したが,これらも10%以内の低下にとどまった.拡張期血圧についても低下傾向を示したものの有意差のある低下に認めなかった.心拍出量では投与後40〜90分に有意差のある減少が認められた.血漿ノルアドレナリンとコルチゾール濃度は漸次低下して15〜90分値に有意差のある低下を認めた.鎮静度は15〜60分に有意差をもって増加した.鎮痛効果については15分値にのみ有意差のある効果がみられた. これまでの研究で,クロニジン2μg/kgの静脈内投与で懸念されたような著しい徐脈や低血圧の発現は否定された.また刺激に対してのストレスホルモンの増加は認められずむしろ減少した.副作用としては口渇や倦怠感が主なものであり,実篤な副作用は認められず,静脈内鎮静法に安全に使用できることが明らかとなった。
|