研究概要 |
酵素触媒を用いる新しい高分子合成反応の開拓を行った。2′位にメチル基を導入したセロビオース誘導体モノマーを設計・合成し、その重合を検討した。T.reesei由来のセルラーゼを触媒に用いることにより重合反応が進行し、2位にメチル基を交互に有する新規セルロース誘導体が初めて合成された。また、酵素触媒重合による生成する人工キチンの結晶形成を観察した。触媒にキチナーゼC1を用いた場合に板状のαキチン単結晶が生成し、さらに結晶の高次集合による球晶が観察された。 リパーゼを触媒に用いる重合反応を検討した。固体のジカルボン酸と液状グリコールの重合を無溶媒系で検討したところ、不均一系にもかかわらず重合が進行し、高収率で対応するポリエステルが得られた。ジカルボン酸、グリコールとも固体の場合は、少量の湿潤剤の添加により重合が進行した。また、グリセリンとセバシン酸ジビニルの重合では、グリセリンの1、3位が位置選択的にアシル化されたポリエステルが得られた。1,2,6-へキサントリオールからは分岐状ポリエステルが合成された。 フェノール類の酵素触媒重合を検討し、新規ポリフェノールを合成した。西洋ワサビペルオキシダーゼを触媒に用いてp-t-ブチルフェノールの重合を行ったところ、定量的に可溶性ポリフェノールが得られた。低分子量体をHPLCで分離し、構造解析を行ったところ、C-Cカップリング物とC-0カップリング物が含まれていることがわかった。また、種々のビスフェノール類の重合を行い、モノマー構造の影響を系統的に調べた。
|