低分子量G蛋白質Rhoのエフェクター分子を単離し、これらを介して細胞骨格形成に至るRhoの情報伝達経路を解明した。(1)ROCKキナーゼがRhoの下流で活性化され、ミオシン脱リン酸化酵素の不活化、LIMキナーゼの活性化によるcofilinの不活化、1型Na^+-H^+交換体の活性化、などを介して、繊維芽細胞での細胞接着斑・ストレスファイバー形成、神経細胞での神経突起退縮に働いていること、また、このような機構がカルシウム感受性の亢進による平滑筋収縮や癌細胞の転移・浸潤に関与している可能性を示した。(2)新たなRhoエフェクターp140mDiaを発見し、これがForminファミリー蛋白質であること、分子内のFH1領域を介してprofilinを結合してF-アクチン重合を、FH2ドメインを介して微小管の配列を制御していること、を示した。また、これらの所見から、整然たるストレスファイバー誘導にはRhoの下流でROCKとmDiaが協調して働くことが必要であることを明らかにした。(3)CitronにN端にキナーゼドメインをもつsplice variantが存在することを見出し、これが細胞質分裂に働くRhoエフェクターの一つであることを明らかにした。また、mDiaのRho結合ドメインを用いたGTP型Rhoのpull-down assayを開発し、これを用いてECT-2が分裂時のRhoの交換因子であることを明らかにした。(4)Rhophilinの結合蛋白質として新規分子ropporinを単離し、両者がともに精子の尾部に存在すること、ropporinがそのアミノ末端でdimerを形成しAKAP-110と結合することを示した。
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