22.2kHzの人工電磁場(VLF波)を利用した地磁気地電流法を用いて遺跡の石造構造物探査を行った。遺跡現場では見掛け比抵抗の変化を調べると共に、電場、磁場各成分の反応も検討した。探査場所は、大阪府岸和田市の久米田貝吹山古墳と奈良県天理市の西乗鞍古墳である。 貝吹山古墳では各種の探査が行なわれ、実際に発掘されて探査結果を比較検討することが可能であった。地磁気地電流法による探査では変化はあったものの構造物と特定できるような反応は見られなかった。実際に発掘によって確かめられたことは、盗掘によって構造物は破壊されており、構造物の断片が残っていることであった。この破壊された構造物は地表からわずか50cm程度から存在した。VLF波を用いた探査では浅い部分に対しては反応が顕著ではないと思われていたが、貝吹山古墳の調査によって浅い部分の探査にも利用可能であることが明らかになったと言えよう。 西乗鞍古墳は天理市杣之内町字乗鞍に位置する前方後円墳である。この古墳の石室の位置を推定することを目的としてVLF探査を行った。測定によって石室と考えられる明確な特徴を捕えることができた。石室の大きさは2m×5m程度で横穴式石室と思われる。西乗鞍古墳の近くに東乗鞍古墳があり、横穴式石室が確認できる。西乗鞍古墳とは時代的にそれほど離れているとは考えられていないため、西乗鞍古墳が横穴式石室を有していると考えてもよいであろう。地磁気地電流法探査で推定した石室の位置は東〜東南東方向であり、石室の端が後円部のほぼ中央である。 以上二つの古墳で得られた結果は考古学的解釈に大きく寄与すると考えられる。VLF波を用いた地磁気地電流法探査は石造構造物の探査には必須の調査手法であり、かつ、測定も簡便で測定しても安定したデータを取得できることを証明したと言える。
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