本研究の一連の目的は、未熟児および熟産児における乳幼児期の感覚運動系の発達的変化を定量的に捉え比較することにより、人の初期発達の発現機構を明らかにすることにあった。平成8年度研究では、これまでの研究のとりまとめとして、(1)未熟児と熟産児の視覚および運動系の初期状態の比較、(2)感覚・運動発達の統合過程の記述、(3)視覚運動系の時系列的分析とシステムモデルを枠組みとした発達理論の展開、(4)胎児期相当週数齢の未熟児を対象とした、アクチグラフを用いた運動の構造分析が計画された。 これら研究の結果は、全体会議、発達心理学会等で発表されているが、概要を述べておく。 (1)視覚運動系の初期状態について:未熟児と満期産児の視力を縞視力を用いて比較してみた。結果としては、未熟児における視力が総じて低いことが示されているが、視覚運動協応にかんしては、大きな差のないことが示唆されている。 (2)感覚運動系の統合過程について:視覚刺激提示時における運動系のまとまりを数量化III類を用いて、生後3ヶ月から12ヶ月までの縦断的変化として検討した。視覚刺激を提示すると運動要素間の距離が小さくなり、上位システムとしての構造が現れることが示唆れている。 (3)発達の理論的な展開について:ダイナミックアクションシステムに基づいて、これまでの研究結果をまとめつつある。 (4)アクチグラムを用いての検討について:これに関しては、現在データの収集が進行している。
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