「方言認知地図」とは、様々な言語変種の使用領域に対する多くの一般人の認識を数量化し、集計した結果、その方言使用領域の意識を地図上に表示したものである。 目標にしていた研究課題を全て達成できたが、それは以下の通りである。(1)処理可能な属性項目や、言語変種の関係項目を増大することによって、例えば、インフォーマントが「大阪弁」だけではなく、「最も感じのいいことば」や「アクセントが特徴的」と意識されている領域の地図などを作成するのが可能となった。(2)これまで処理したのは、日本全国版地図と近畿圈地図の2つだけであったが、白地図を自由に入力し、集計できる汎用プログラムを新たに開発した。(3)認知の度合いを現わすカラー表示以外にも、白黒の模様が出るように改良した。(4)これまでの複数の個別プログラムを、一つのプログラムに統合した。(5)最大な課題だったのは、これまでのDOS-Basicのプログラムをウィンドウズ対応のビジュアル・ベーシックに作り直すことだったが、PDQv.1(Perceptual Dialect Quantifier)を開発し、現在は、韓国の方言認知地図のデータを分析中である。 これ以外にも、これまでのパーセント表示の地図に加えて、統計処理の結果を地図で現わす方法を考えた。それは、2つの地図を比較する時に、パーセントとの間の有意差を抽出する(a)プロポーション検定の地図、または、複数の地図を扱うときに利用する(b)平均値地図、(c)偏差値地図、(d)標準偏差地図、である。 このプログラムは、方言の使用領域に対する認知を追究するために開発されたものだが、言語に対する認知領域だけではなく、あらゆる社会心理的現象と関係する認知領域を研究する上で役立つと思われる。
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