研究分担者 |
鉄山 博 大阪商業大学, 商経学部, 助教授 (10227499)
蔡 建国 新潟国際情報大学, 情報文化学部, 助教授 (40278065)
村田 雄二郎 東京大学, 大学院・総合文化科研究科, 助教授 (70190923)
上田 信 立教大学, 文学部, 教授 (90151802)
古厩 忠夫 新潟大学, 人文学部, 教授 (30018642)
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研究概要 |
政治の領域では,20世紀中国の二つの政治空間が抽出され,19世紀中華世界の原空間の中に,それぞれ20世紀現象としての国民国家的凝集,中華民族的凝集をとげてきており,その国民国家的ナショナリズムと中華民族的ナショナリズムの具体的進展過程が分析された。前者には,20世紀前半期の資本主義的国民国家への自己凝集と20世紀後半期の社会主義的国民国家への自己凝集との二段階があり,ともに20世紀中華民族的世界の論理を共有する複合的政治空間を構成していた。そして,現在の中国には,社会主義国民国家の空間,国民国家の統治能力を増強しつつある空間,および中華民族的論理の作用する三つの複合的政治空間の存在にその特徴がみいだせることが考察された。 社会の領域では,中国社会の近代化と森林史について検討された。まず蒋介石政権の近代化=社会統合には,国民党と職能団体を通じた社会統合の二つのルートがあり,職能団体では青幣などが利用されたことに中国社会近代化の特徴の一つがみられるとした。また日中両国の近代化を地域格差の視点から比較し,中国の場合,構造的な地域格差が障害となっていることが考察された。さらに,森林と社会との関係については,安徽省黄山の山林の変遷と江西省北西部の九嶺山の森林破壊から免れた事例が分析された。 イデオロギーの領域では,中国近代の政治文化と蔡元培についての検討がなされた。政治文化では,清末の皇権の変質,「大一統」イデオロギー,近代国民国家的な均質性と帝国的な雑種性の併存,「五族共和」論の系譜,顧頡剛の「中華民族」概念の歴史的背景が考察された。また,蔡元培の文化的近代化思想の特徴が中西文明融合論にあり,その理念としての「兼容并包」が考察された。 経済の領域では,伝統的農業経済における代種・代耕・分種が分益制以外の意味でも用いられる幅広い概念であり,佃種・佃耕は自種・自耕の対概念であって,経営資本をだれが出すかによって,されは借地にもなり分益・請負耕作にもなることが分析された。
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