研究概要 |
平成8〜10年度の3カ年を対象とする当計画研究「現代中国の国家・社会関係一一社会変動の構図」班は、その初年度において、<総括研究>における《国家・社会関係》フレームワークの概念整理とその下での<小項目研究>としての個別研究の準備作業を行い、以下の通りの新たな知見を得た。 1<総括研究>では、「党=国家体制」の変質と「市民社会」の両者は,密接に連関するものの,必ずしも同一のものを意味するとは限らないこと、すなわち、市民社会の勃興,より自律的な社会組織,集団の誕生・生成が、プレ改革期の権威主義的社会から,民主諸制度の誕生をもたらす必要条件ではあっても,それ自身が、現存する権威主義的《国家・社会関係》の瓦解を自動的に保証するものではないことが明らかとなった。 2<個別研究>では、(1)私営企業経営者が、政治への参加意欲や現状変革の志向を強く有していること、(2)都市・農村間の労働移動に関しては、プル要因としての都市側からのより強い吸引力が存在する一方、プッシュ要因もなお出身地に存在すること、(3)地域間労働移動は、以前として、基本的に血縁・地縁という原始的な社会関係に基づいていること、(5)社会的階層移動に関する職業威信調査では、「収入」「尊敬」「技能」等の項目が重視されるようになったのに対して、「負担」や「安定性」への評価が低くなっていること、などが明らかとなった。
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