研究分担者 |
中居 良文 アジア経済研究所, 副主任研究員
唐 亮 愛知学泉大学, コミュニティ政策学部, 助教授 (10257743)
沢田 ゆかり 神奈川大学, 外国語学部, 講師
趙 宏偉 杏林大学, 社会科学部, 講師 (40265773)
国分 良成 慶応義塾大学, 法学部, 教授 (20146567)
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研究概要 |
本年度は研究プロジェクトの最終年度に入り,研究分担者,公募研究者,研究協カ者それぞれ最終研究成果を執筆することが最重要課題であった。改革開放下での中国政治体制の変容を中央・地方関係を軸として捉えなおすというA01班の課題は,中央・地方関係の変化が政治体制そのものの変容を引き出しているのか否かという点で,いまだ論争中である。まず分担者からその成果を見ると,唐亮は人事を軸いまだ党中央のコントロールは維持されていることを明らかにした。趙宏偉は省党書紀に見られる中央利益の代弁者,地方利益の代弁者の二重の役割・機能を分析した。中居良文は東北地方の省・市政府レベルでの対外経済政策の「独自性」 「多様性」を分析した。沢田ゆかりは県・市・区レベルの地方政府と社会との関係を社会保障制度の普及とその現実的な困難さを明らかにし,地方政府の機能の多様化を検討した。公募研究者では,滝口太郎が改革開放期の軍と党との関係を見ながら構造的変容の進む中でなお一党体制維持の物理的基礎として軍が機能していることを論じた。大橋英夫は今年度のみの参加であったが,分税制などの財政制度の改革を軸に経済面での中央地方関係をカバーした。研究協力者の中では,三船恵美が返還以後の香港を一国内の中央・地方関係としての「一国二制度」という観点から分析した。三宅康之は中央政府と地方都市の経済政策決定関係を重慶と成都を比較することによって論じた。中岡まりは農村の基層政権における選挙の実態分析を試み,田原史起は雲南省の農村の幹部,政権運営の実態調査をまとめた。佐々木智弘は2年度から北京留学のため,伊藤信之は本務の研究活動が多忙なため,最終研究成果は出されなかった。天児がこれらの成果をまとめながら,中央・地方関係は依然として一党体制の枠内で機能しているが,制度的制約を超えて,実態的には様々な地方の「自律的活動」が噴出するようになっており,そのことが将来の中国の政治体制のあり方に重大な影響をもたらすとの判断を持つようになっている。研究成果は,二冊の著書として将来出版される予定である。
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