研究概要 |
中国を含む北東アジアにおける経済発展とその環境負荷構造を明らかにし、これらの日本海の環境保全に対する影響を分析するために、本年度は、下記の2つの事項に関連するデータを収集し、環日本海における多国間環境保全政策の課題を整理した。 1.日本海の海洋生態的、環境容量的な制約について 日本海はその海洋構造上(深い海盆をもち、対馬、津軽、宗谷の狭く浅い海峡を介して外海につながる半閉鎖性海域)の理由のために海洋汚染物質の滞留に脆弱であると考えられる。大陸における急速な経済発展は、地球規模の気候温暖化とそれに伴う海面上昇の可能性とあいまって、長期的には日本海をめぐる多国間の越境環境汚染を招き、地中海、バルト海という付属海が辿ってきた環境問題と同様な紛争の構図となる可能性が大きい。そこで、日本海を取り囲む沿岸域を地域経済系-沿岸城生態系からなるシステムとして、 (1)海洋生態系における資源と環境容量的な制約、(2)沿岸地域経済系からの汚染排出の負荷、 (3)沿岸地域社会の多国間の環境保全への制度的な対応能力、 という側面から北東アジアにおける環境リスク問題を整理した。 2.中国東北地方の水質汚濁の現状とその負荷構造 中国の東北地方は黒龍江省、吉林省、遼寧省の三つの省から構成されているとすると、その土地の面積は78.65万平方キロメートルで、その総人口は9,295万人である。東北地方は自然資源が豊富で、石油、石炭、鉄鉱石等を多量に消費する環境汚染型の重工業は大部分東北地方に集中していて、しかも、経済発展をするに従って、毎年大量の自然資源が消耗し、大量の廃棄物をだすという構造であり、各地に産業公害型の被害をもたらしている。本年度は中国の東北地方の水資源とその利用から派生する水質汚濁の状況を1985-1986年に行なわれた全国規模の工業部門からの排出調査の報告書に基づいてその水質汚染の負荷構造の特徴を明らかにした。
|