研究概要 |
本研究の目的ははミクロ統計データを使用して多様化した世帯構造と世帯の社会経済行動の実態およびその背景を明らかにし,統計データの再利用の可能性を実際に示すことであり,今年度は主に以下の3つの課題についての研究成果を得た。第1に、厚生省の『国民生活基礎調査』のミクロデータにより準同居と呼ばれる状態にある親子の世帯を推定し次の結果を得た。 1 子が同一敷地内・同一住居内にいる親世帯の内,24%が同一住居内の独立世帯であると推計された。 2 準同居世帯の親世帯の約30%が仕事を持つ夫婦のみの世帯,約40%が仕事無しの夫婦のみの世帯で,それぞれ平均で616万円,302万円の所得を得ていた。 3 親の世帯の平均所得は433万円,子の世帯の平均所得は725万であり,合算した平均所得は1158万円となった。 4 所得を合算することにより,所得格差が減少することが確かめられた。 第2に、生活時間に関する社会勘定の推計に関してはミクロデータを使用して集計データによる結果の改訂中であるが,現段階では「移動行動」に関して以下の結果を得ている。 5 移動行動があるのは全体の約3分の1であり,土日に多い。職業別では専門職,技術職,管理職の順に移動行動が多い。 6 帰宅後の行動を除く移動後の行動としては,多いものから食事が15%,買い物が9.8%,交際が8.6%であった。 第3に、世帯の多様化にともなって従来は世帯の中で行われてきた生活保障が行政によって実施される程度が進展しているが,その充足度や行政効率を統計的に明らかにする試み行ったところ,以下の結果を得た。 7 京阪神3県330市町村のデータによると,福祉関係費は人口規模に関してU字構造を持つことが確認された。 8 基準財政需要額と決算額の乖離の程度は平均世帯人員によって規定されることが確認され,過密と過疎の市町村で大きく,県によって異なる。
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