銀河団の構成要素である高温ガスと銀河の集中度の宇宙論的進化を軸にして、銀河団のX線観測をすすめた。 (1)遠方の電波銀河周辺の銀河団;z=0.5付近の電波銀河の周辺に銀河の集中(すなわち銀河団)がみられることが知られている。我々は、あすか衛星によりこれまで4個のz=0.5付近の電波銀河を観測した。いずれもリッチネス2程度に対応する銀河の集中度をもっているにもかかわらず、1例(3C295)を除いて、高温ホットガス成分のX線光度が1E44erg/sを越えるものではなかった。同程度の銀河の集中度をもつ近傍銀河団のサンプルと比較すると、(統計的により多くのサンプルが必要であるが)高温ホットガス成分が暗いという傾向がみえている。 (2)A1674の観測;A1674はz=0.1の銀河団であるが、リッチネス3に対して、X線光度が5E43erg/sと非常に暗い。我々がこの銀河団をあすか衛星で観測した結果、ガス温度として3keVという値を得るとともに、X線放射の空間的ひろがりに非対称があることがわかった。これより、A1674はz=0.1であるにもかかわらず進化の途上にある銀河団と考えている。 (3)Failed Cluster0806+20の観測;逆に、銀河の集団がないところにX線を放射するような高温のガスがあると宇宙構造形成モデルに重要なインパクトがある。我々は、アインシュタイン衛星により見いだされたこの種の天体の候補(Failed Cluster)0806+20をあすか衛星で観測した。結果として、1)z=0.5付近の銀河団あるいは2)可視光で暗いクェーサーのふたつの可能性を示した。
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