どのような構造変化をしながら蛋白質は機能しているのか、すなわち蛋白質が関わっている反応中間体の構造を時間分割ラウエ法を使ってX線結晶構造解析法で決定するための実験法の開発を行った。本研究ではアルカリプロテアーゼ(A)を研究対象とし、APの酵素活性がほとんどないpH4でAP・基質複合体結晶を調製した。この結晶のpHを5.5に上げると基質の種類によっては分オーダーのターンオーバー時間で反応が進行することが期待できる。そこで、まずpHを変化させるために使用するフローセルを試作・改良し実用化した。次にこのフローセルを使ってAP・基質複合体結晶のpHを4から5.5にジャンプさせた後、一定時間毎に(3、5、7、20分後)回折強度を測定した。X線源には高エネルギー研究所放射光実験施設のシンクロトロン放射光から得られる白色X線を使い、BL18Bに設置されているラウエカメラでイメージングプレート上にX線回折パターンを記録した。白色X線は単色化したX線に比べて非常に大きなエネルギーを持ち、結晶に致命的なダメ-ジを与えることがしばしばあるが、結晶化法の改良やアルミ吸収板を使うことでAP・基質複合体結晶はダメ-ジを受けずにデータ測定ができた。データ処理を行った結果、completenessが50%、Rmergeが10%前後の精度の回折強度データが得られた。データベースに登録されているAPの座標を使って差フーリエ図計算したところ、AP-VAAF複合体では3分と20分後のフーリエ図は明らかな違いを示していた。また、pH4のままで測定したAP-ZGGA複合体結晶の回折強度データからはZGGAと考えられる電子密度を活性部位に見ることができた。
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