1)現在つくばの放射光実験施設で動いている時分割ラウエカメラで、レーザフラッシュをトリガーとして、ミリ秒領域でX線結晶解析が行なえる試料として、α鎖のFeをMgに置き換え、β鎖の配位子の結合を阻害する位置のvaline(67E11)をisoleucineに置き換えたhemoglobin(Hb)のCO結合型、α_2(Mg)β_2^<E11Val-lie>(FeCO)を使っている。 2)この結果に対して、どのような方向からレーザをあて、どのような方向からX線を入射させ、どの軸で結晶を回転して回折データを収集するかのが良いかを検討した。最終的に、結晶を回転するω軸に垂直に結晶面をむけ、ω軸に平行にレーザをあて、X線はこの結晶面に平行に結晶面の表面近くを通すのが最善であることになった。この配置のデータを、ヤグレーザの532nmを使って、フラッシュ後1msecX線を通し、これを100回加算したデータを集め、現在解析中である。 3)Hbの光吸収のスペクトルの谷に当たる485nmのダイレーザも使った。532nmに比べて格段に有利なはずであるが、ライトガイドの出口と結晶の微妙な位置関係の変化と、レーザ自身の不安定さのため、結晶にあたる光の強度が安定せず、また良い結果が得られていない。 4)単結晶中のHbの酸素平衡機能の測定が、比較的短時間でできるようになった。また、Hb単結晶の光解離によるCOのキネティクスも、測定可能になりつつある。 5)結晶中で、Hbの構造変化を阻害している要因を見いだすため、polyethyleneglycolの溶液から出るdeoxyHbの結晶の、分子間の結合に関与しているアミノ酸を変異させたHbを、組換DNA法で大腸菌を使って発現させ、結晶を作り酸素平衡機能を測定している。
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